月形翔監督
林民夫脚本
大泉洋主演、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、
光石研、有村架純ほか
医療器具IABPバルーンカテーテルを開発した
筒井宣政さんの実録物語。
1970年代、
町工場の社長が生まれつき心臓病の娘を
救うために人工心臓を研究する。
娘の難病を克服するため、
医療機関、大学病院、研究所に懇願するも
どこも娘の心臓を治すことはできない。
全国だけでなくアメリカまで手を伸ばすも
手術はできない、の返答ばかり。
いくつかの研究所へ援助金を寄付することで
人工心臓の開発を後押しすることを考えるも
どの研究所が適切かヒアリングするなか
あまりに悠長な業界の体質に失望する。
娘の心臓の寿命はもって十年間。
筒井は自分で人工心臓の開発を決意する。
とはいえ、独学で、まして単独での開発は
素人には不可能。大学病院に支援を頼み
そのなかで協力的な一つと開発を進める。
ネタバレと感想
この作品とにかくすこぶる良かった。
私には響いた。
テーマは信念について。
人の命、家族愛、サクセスストーリーなど
ほかにもたくさん描かれているが、
諦めない心と突き進む姿勢に心打たれる。
また脚本も演出も無駄がなくて、
それでいて直接的な描き方をしていない。
大泉洋の主人公も信念の人を演じきり、
菅野美穂の奥さんも変わった家族を魅力的に
輝かせてくれる。
無邪気な三人娘が物語に引き込んでくれる。
褒めまくって、最後にもう一つ。
音楽が良い。
無音で耐えられないから当て込みました
みたいな映画音楽が増えてきているが、
本作はきちんとこちらの情緒をつかみ
心の落ち込む時にそっと手を添えてくれる
そんな音楽だった。
信念て言葉は私の人生に重要な要素なのかと
気付いた。年老いた老害の私だが、
ときおりあのとき冷静に動かず生きる道を
選択したら今頃安泰かなと思うことがある。
信念で動いてきて、信念で周りを振り回して
きたかもしれない。
反省はしてるけど後悔はしない。
誰かに謝ることは日常茶飯事だけど、
やってきたことには真摯に取り組んできた。
筒井さんは娘を救えなかったけど、
もっとたくさんの命を救った。
娘の最期の一言も、
伏線のように回収していくときに
ふわっと暖かいものが心に広がっていくのを
感じたのは、名シーンの一つだ。
とてもよい作品、ありがとうございました。