ひとつ大きな仕事を終えることができて、ほっとしているところだ。資料の生命(いのち)を次の世代につなぐことができたからで、博物館人なら、誰もが一番喜ぶことであるにちがいない。

 

昨年6月から12月までの約半年をかけて、江戸時代中期作成の「萩城下町絵図」の保存修理が完了した。そして本日、企画展「萩城下町のひみつ」の展示替えを実施し、修復を終えた「絵図」を設置することができた。

 

なにせタテ・ヨコともに3メートルをゆうに超える特大サイズ、超弩級の掛幅であるため、大変神経を使うが、無事に陳列をすることができた。市民の皆様に、これはできればご覧いただきたい。そう強く願う貴重な資料である。

 

今回の絵図の修復のポイントは、次のとおりである。

 

①修復の対象となった「萩城下町絵図」は、かねてから状態がよくなく、展示に支障があった。具体的な劣化としては、破れや亀裂が多く確認でき、顔料が剥落しかかった部分があるなど、陳列するために展開するのが恐ろしいほどであった。

②一昨年に、大阪府在住の個人の方から、博物館資料の維持・管理のためとして寄付金のお申し出があった。この寄付金に、市の予算を合計して修復の実施にめどがたち、今年度、修復業者を選定・入札などの手続きを経て、山口県宇部市の地神舎に決定した。

③地神舎の代表は、馬場良治氏(国選定保存技術保持者・建造物彩色)である。つい先日、NHKの「プロフェッショナル」に出演されるなど、馬場氏の活躍ぶりは顕著である。

 

このように、この萩城下町絵図は、寄付金を得たこと、超一流の修復家に巡り合えたことなどの大変な幸運に恵まれ、よみがえった。前の姿から見比べると、とても同じものとは思えないほど、ビシッと仕上がっている。

 

展示公開は会期末の3月30日(火)までの約1ヵ月間を予定している。重ね重ねご高覧をいただければ幸いである。