博物館の展示品に「複製」もしくは「レプリカ」と書かれていたら、大半の人は「な~んだ、ただのニセモノか」とお思いになるのだろう。

けれど、複製は通常、「実物資料」を保存することを目的に、その代用品として長期に展示できるようにつくられるものである。

実物をずっと出し続けるのが本当は一番いいに決まっているが、貴重な資料を保存しつつ活用するということ自体が、そもそも矛盾した行為なのである。

よって、われわれ博物館人はおしなべて、なるべく実物を展示しない、もっといえば、したくないのである。

子どもさんにこのようなことをいっても、なかなかわかってはもらえないだろうが、基本的には大人の世界ということで、どうかご理解をいただきたい。


以上はいいわけじみた書き方になったかもしれないが、ようやくにして僕の博物館で、吉田松陰の絶筆の展示がはじまった。


展覧会の前半は複製だったけど、後半に突入した今は、正真正銘のホンモノだ。

この絶筆の実物を観られる機会は、もう、当分のあいだこないであろうと思われる。


大真面目に本音でいうけど、松陰ファンなら、これを観ておかないと一生後悔するかもしれない。