ソフトバンクの斉藤投手が沢村賞を受賞した。プロ野球の投手にとってはもっとも名誉な勲章として知られるが、斉藤投手は2003年シーズンに受賞して以来、2度目の快挙となった。

沢村賞を2度受賞した投手は、最近では巨人の上原浩治がいる。最多は金田正一や斎藤雅樹の3度だが、斉藤和巳投手もこうしたそうそうたる大投手の仲間入りを果たしたことになる。

斉藤投手で記憶に新しいのが、日本ハムと戦ったパリーグのプレーオフ最終戦だ。

彼はプレーオフ初戦の西武戦で、松坂大輔と息が詰まるような投手戦を繰り広げ、おしくも1‐0で負け投手となった。そして自ら志願して当番したのが、負ければもうあとがない日本ハムとの一戦である。ここでも彼は、まさに獅子奮迅の働きをみせてくれたが、打線の援護を得ることができず、またも1‐0で敗れている。彼がマウンドに立つ試合に限って、なぜか打線が振るわないことが多く、負けた2戦ともほんとうについてないとしかいいようのない試合であった。

最終戦となったこの試合では9回、ギリギリまで孤軍奮闘していたが、ちょっとした内野手の不注意から日本ハムにとてつもなく大きな1点を献上してしまい、緊張の糸がブッツリ切れた斉藤投手はその巨体をマウンド上に沈めた。そしてその場で号泣して、しばらく身動きがとれなかったという。それほどまでに彼はホークス投手陣の柱、エースとしての自覚以上に、ホークス選手会長として重責を一身に背負い込んでいたということであろう。

プレーオフを通じて、斉藤投手のおかげでプロ野球選手からひさびさに胸を打たれたが、予想通りの沢村賞受賞を心から祝福したい。そして来年こそは優勝して、われわれホークスファンにも感動をわけてほしい。