「チャンピオン」
「チャンピオンが何のために存在するか知ってるかい?」
ある高名なボクシング世界チャンピオンは言った。
「倒されるために存在するのさ」
今なら彼の言った言葉の意味が分かる。どんなチャンピオンもいつかは年老いる。そして若い挑戦者に倒されるための目標として存在し続ける宿命にあるのだ。無敗のまま引退するチャンピオンなど例外中の例外だ。
そのチャンピオンは最後の試合の前の控室でマネージャーに、
「オレが負けたら次はヤツ(挑戦者)のマネジメントを引き受けてくれて構わない」
という意味のことを言ったという逸話が残っている。
若い挑戦者がチャンピオンをノックアウトし、世代が交代する。リング中央でセコンドに肩車され歓喜の声を上げる挑戦者も、またいつか逆の立場に立つ道を歩むことになる。それがチャンピオンの宿命なのだから。