「アルコール」
ゆっくりと、しかし確実に酔いが回って来ていた。アルコールの深い霧の中を僕は彷徨い歩いた。そこでは様々な人物に会うことが出来た。古い友人、仕事仲間、そして別れた恋人たち…。彼女たちは親しげな笑みを浮かべて語り掛けてきた。そこではゆっくりと時間が流れた。やれやれ、ずっとこうしていられたらな。
しかしやがて誰かに肩を揺すられ、ぼんやりと僕は目を覚ます。バーの閉まる時刻だ。外に出ると空気はひんやりとしていた。そこには先程までの親しげな雰囲気は一欠片も無い。僕は白い溜息を吐くと、重い足取りで家路についた。