この小説を読み始めてから、何日か経った時、我が家のねじまき鳥と名付けられたカメレオンモドキが死んだ。ある朝横向きに倒れていた。触ってみるとまだ息があり、手の平に乗せると弱々しくではあったが、その息遣いを感じる事が出来た。与えた餌も食べた。回復する、そう思っていた。だけど翌日彼は動かなくなってしまった。それが突きつけられた現実だった。その夜花を添えて川の脇の地面に埋葬した。暗がりの中、携帯電話の明かりを頼りに、蔦が絡みついた地面を掘り下げ、彼が収まるだけのスペースを作った。そこに棺代わりに作った箱を埋めた。花を敷き詰め、お腹が空かないように、ミルワームを添えて。もしもっと何かをしてあげていれば違う結末を迎えたのか、後悔してもその命は戻ってきはしない。悲しいけど受け入れなければいけない、それが彼との別れだった。
話が脇道に逸れた。久しぶりに読み返して、ほとんど内容を覚えていなかった。ただ牛河さんの事だけ記憶の中に残っていた。彼の何が僕を刺激したのか?僕にははっきりと分からない。
あるものは記憶に残り、あるものは忘れさられていく。ただふと瞬間、何がきっかけかは分からないまま思い出す事がある。ちょうど何年も前に読んだこの本を、ねじまき鳥とカメレオンモドキに命名した事をきっかけに、再び僕の手に持たれたように。
そしていつかまた忘れて行くのだ。