歴史を弁えた大統領【時事所感101】 | 多事争論(時事所感)

歴史を弁えた大統領【時事所感101】

第2次世界大戦後、アメリカ合衆国とソビエト連邦(現在のロシア、以下ソ連)の冷戦対立が始まった頃、

米国の核兵器保有数が相当数あり、

ソ連の核兵器保有がまだ少数だった時の話。



米国政府や軍部内で、


「今なら核兵器を搭載した多数の爆撃機で先制攻撃すれば、

ソビエト連邦をやっつけることが出来る。」


こうした意見がありました。


時の米国大統領アイゼンハワーはこれに異を唱えます。


「確かに今なら勝てるだろう。

然しながら、もっと考えるべきだ。

ソ連(ロシア)を負かそうとしたらどうなるか。

ロシアに侵攻した国や軍隊はその後どうなってしまったか。過去の歴史を振り返ってみたまえ。」



大統領アイゼンハワーは、歴代米国大統領のなかでは珍しく歴史からの学びを弁えた人だったのでしょう。


かつてのナポレオンやドイツがロシアとの対立、軍事侵攻の後、どうなったかを。



彼は、第2次世界大戦中の西ヨーロッパ連合軍最高司令官、ノルマンディー作戦を成功を収め、沢山の戦闘に参加した経験がある英雄的軍人でした。






その彼が実は、

「外交問題は武力衝突、軍事行動では解決出来はしない。」


という考えを持っていました。


軍人としての豊富な経験則と知識や見識としての歴史を弁えた人だったのでしょう。


これを示すのが、米ソ冷戦期の国際問題について核兵器使用の可能性についての記者団の質問にこう返しています。


“No,You can't defend anything with nuclear weapons”


「核兵器を使用しても何も解決し守ることは出来ない」




※ホワイトハウスにて。左:アイゼンハワー大統領、
中央:皇太子(現在の上皇陛下)







日本に関連した話では、日本への原子爆弾投下、核兵器使用計画を知った時、

トルーマン大統領へ原爆投下反対の意見を出しています。


然しながら、ポツダム会談から間もなく広島・長崎へ原爆投下されます。


仮に彼の考え方が反映されていれば、

ポツダム会談の日本無条件降伏案ではなく、別の降伏条件案であったら、原爆投下というジェノサイドは必要無かったのではないか、

その可能性の余地は十分あったでしょう。




アイゼンハワー氏はアメリカ合衆国という国が過剰な判断を下して誤った方向へ進む可能性がある、そういう危険性を感じていた人だった。


彼、アイゼンハワー氏の有名な大統領退任演説では軍産複合体(military industrial complex:MIC)への注意の必要性を指摘します。


巨額の国家予算を投じて研究開発される分野は、

大学や研究機関等の学術分野をも巻き込み、

純粋な科学や学問・学術の探求や研究の場でなくなる。



彼は過去の歴史を弁えただけでなく、

その学びから将来へ向けた時間の概念をもって演説していました。



何事も過剰、過激は良くない。そのバランス感覚が必要だと知っていたのでしょう。