官能小説「夕日に隠れて」七
僕は松倉の顔に、ゆっくり、というより恐る恐る顔を近づけた。
自らの欲望に従ったわけではなかった。
松倉の色香に吸い寄せられたのだ。
一瞬、ほんの一瞬、松倉が、ウソだよ~って舌を出して僕を馬鹿にする姿が頭に浮かんだ。
でも、徐々に近づいて濃くなってくる松倉の香りによって、それもすぐにどこかへ押し流された。
ぼんやりと薄くなってゆく僕の視界で、松倉の、まだ汚れを知らない白い肌が、大人びた目が、なめらかな唇が、幻のように美しく艶やかに整えられてゆく。
頭の中は、神秘の森に漂う妖しい霧に包まれ、硬直しそうな理性を溶かし、魅入られた世界に没入せよと甘く囁く。
少しだけ、恥じらいと現実感覚を取り戻したのは、夢気分の中ですでに松倉にそっと口づけをした後だった。
それは本当に、夢幻のような、とろけるような瞬間だった。
ああ、とうとうキスしちゃったよ…
僕がまだ失いきれていなかった廉恥心(れんちしん)と、貪欲な欲望とが絡み合って、淫靡な妄念はさらに昂(たかぶ)り、松倉の全てを、この唇で吸い尽くしたいと願うようになった。
と、松倉とつながったままの唇に、何か柔らかで粘つくような感触が襲ってきた。
すぐに、それが松倉の舌先だとわかった。
その感触は、光のスピードで僕の唇から脳髄へと伝わり…
痺れるような快楽への期待が、大海嘯のように僕の全身へ広がっていった。
いいのだろうか、こんなに気持ちよくなってしまって…
いいのだろうか、こんなに一人の人間と深く交わってしまって…
かそけく生じた戸惑いを押しのけて、松倉の舌先が、僕の口の中に入ってきた。
もう何も考えられなくなった。
自らの欲望に従ったわけではなかった。
松倉の色香に吸い寄せられたのだ。
一瞬、ほんの一瞬、松倉が、ウソだよ~って舌を出して僕を馬鹿にする姿が頭に浮かんだ。
でも、徐々に近づいて濃くなってくる松倉の香りによって、それもすぐにどこかへ押し流された。
ぼんやりと薄くなってゆく僕の視界で、松倉の、まだ汚れを知らない白い肌が、大人びた目が、なめらかな唇が、幻のように美しく艶やかに整えられてゆく。
頭の中は、神秘の森に漂う妖しい霧に包まれ、硬直しそうな理性を溶かし、魅入られた世界に没入せよと甘く囁く。
少しだけ、恥じらいと現実感覚を取り戻したのは、夢気分の中ですでに松倉にそっと口づけをした後だった。
それは本当に、夢幻のような、とろけるような瞬間だった。
ああ、とうとうキスしちゃったよ…
僕がまだ失いきれていなかった廉恥心(れんちしん)と、貪欲な欲望とが絡み合って、淫靡な妄念はさらに昂(たかぶ)り、松倉の全てを、この唇で吸い尽くしたいと願うようになった。
と、松倉とつながったままの唇に、何か柔らかで粘つくような感触が襲ってきた。
すぐに、それが松倉の舌先だとわかった。
その感触は、光のスピードで僕の唇から脳髄へと伝わり…
痺れるような快楽への期待が、大海嘯のように僕の全身へ広がっていった。
いいのだろうか、こんなに気持ちよくなってしまって…
いいのだろうか、こんなに一人の人間と深く交わってしまって…
かそけく生じた戸惑いを押しのけて、松倉の舌先が、僕の口の中に入ってきた。
もう何も考えられなくなった。