官能小説「夕日に隠れて」二 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

官能小説「夕日に隠れて」二

グランドを横切っていく。



夕日が目に見えて沈んでいくようだ。少しずつ、少しずつ暗くなっている。



松倉は、急な展開に動揺している僕の心中など全く知らずに、恬淡(てんたん)として先を歩いて行く。



ああ…なんか、どきどきするなあ…松倉のやつ、何を考えてんだ……?



僕がどうして帰らずにベンチに座っていたのか聞きたくなる気持ちはわかる。



でも、だからといって部室に入って話をしようと誘うとは…



「…何、考えてるの?」



少し考えている間に、歩みを止めて、すっと僕のそばに寄ってきた松倉が悪戯っぽく笑いながら言った。



でも、松倉のその言い方が…口吻(こうふん)が…気のせいか、さっきまでの態度とは違って、僕には少し、しっとりとしていたように、色を含んでいたように感じられて……胸の鼓動が、さらに高鳴った。



「いや?何も考えてないよ。」



僕は、そう答えるのがやっとだった。



そこからは二人、並んで歩く。



沈黙を何とかしてごまかしたいのたが、頭に言葉が浮かんでこない。



結局、松倉の無意識のプレッシャーをはねのけられないまま、部室の前まで来てしまった。



帰るのが遅いからと預かっていた鍵でドアを開ける。



入口の近くの蛍光灯のスイッチも入れた。



室内がパッと明るくなった。



「うわ~久しぶりに見るなあ、この部室の中。」



松倉の溌剌(はつらつ)とした声。これから二人きりになるというのに…けれども、寧(むし)ろ、それが今の僕の緊張した意識の下に潜む、甘い期待を心地良くくすぐった。



「っていうか、この中に入るの初めてだよね、あたし。」



「おお…そうだよな。」



部室の中を見渡しながら、松倉は床に敷かれた青い絨毯の上になよやかに腰を下ろした。



「意外ときれいだよね…この部室。」



松倉が呟(つぶや)いた。



狭い空間。白塗りの冷たいコンクリートの壁に囲まれ、入口の向かい側の壁の上部に30センチ四方くらいの小さな窓。天井に二本組の普通の細長い蛍光灯が白い光を放って室内を明るくしている。



見方によっては、刑務所の独居房のようだが、僕たち野球部は、いつもここでリラックスして昼飯を食べたり、雑談したりしているのだ。



松倉を見て、僕はどこに座ろうかと一瞬、迷ってしまった。そして、なんのことはない、いつものように壁際に置いてあるパイプ椅子に腰を下ろした。



一緒に絨毯に座ったら、なんか狙ってるみたいだもんな……。



ああ~でも…これから、どうしたらいいんだっ!?