私的 桃太郎伝説 12 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

私的 桃太郎伝説 12

最後に、おじいさんは凄まじいくらい長くて厚い刀と脇差を桃太郎に与えました。




桃太郎は口にはしませんでしたが、内心ではこれも有りがた迷惑だと思っていました。




確かに、鬼と戦うこともあるかもしれません。しかし、桃太郎は幼いころから自然と、動物たちと、裸で触れて、裸でぶつかって、そうすることで彼らと本当の会話をしてきたのです。




桃太郎は、鬼に対してもそうありたいと思いました。




第一、桃太郎は今まで生きてきた中で、対する相手に怯えたことも、また実際に危険を感じたことも一度もないのです。




武器防具を身につけるということは、自分より強いかもしれないものへの警戒心のあらわれです。桃太郎は、それは必要ないと思いました。もちろん、何者にも負けたことがない男としてのプライドもありました。




桃太郎は、出発しておじいさんとおばあさんが見えなくなったら、これらを全て脱ぎ捨てようと秘かに思いました。




おじいさんの感心しきりの顔を見ていると悪いような気がしましたが、やはりそこは譲れないと思いました。




さて、そんなこんなでとうとう出発の日がやってきました。



おばあさんは桃太郎の髪をきれいに結い付け、さらに桃太郎の拳ほどもある大きな大きなキビダンゴをいくつもこしらえて袋に入れ、持たせてくれました。




例の甲冑と刀も一応、身につけて準備は整いました。




おじいさんは泣いていました。おばあさんも、もちろん泣いていました。




桃太郎だけは泣かずに、むしろワクワクする気持ちを抑えて二人の泣き顔をじっと見ていました。