私的 桃太郎伝説 11 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

私的 桃太郎伝説 11

その翌日。



昼飯時に、おばあさんは泣きはらした目で、桃太郎に静かに「行ってきなさい」と言いました。



「 聞いた時は、ただただ驚いて混乱したけど、お前になら鬼退治できるかもしれないものねえ。……いいや、お前にしかできない。世のため、人のためじゃ。行ってきなさい。でも、無理だと思ったら恥ずかしがらずに帰ってきなさい。いいね、約束だよ。 」



おばあさんのありがたい言葉に、桃太郎は泣きそうになりましたが、ぐっとこらえました。



ところで、おじいさんがなぜかいません。



おばあさんに聞くと、おじいさんは町に行っていると言います。



何をしに?と不思議に思っていると、ちょうどそこへおじいさんが帰ってきました。



大きな木箱を背負って。



手にも、何か長い物を持っていました。



「 来てみい、桃太郎。お前の旅立ちにふさわしい衣装を用意してきたぞ。 」



見ると、木箱の中には立派な甲冑と、赤くきらびやかな陣羽織が入っていました。



手に持っていた物は、大きく「日本一」と書かれた幟(のぼり)でした。



桃太郎はドン引きしました。



こんな派手な衣装を身にまとって、しかも変な幟まで持って鬼ヶ島へ行かなければならないのか。



道中に誰かに会えば、人は皆その恰好に最初は驚き、やがて噴き出して「面白いヤツがおるぞ」と周りの人々に言いふらすために駆け出すでしょう。



桃太郎は、おじいさんにさあさあと急かされてその衣装を身に着けてみました。



「 見よ、なんとも立派な武者すがたではないか! 」



おじいさんは、その時の桃太郎の気持ちなど露ほども知らずに、そう言って高らかに笑いました。