官能小説「放課後の夜」五十七 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

官能小説「放課後の夜」五十七

そのホテルは町外れの国道沿いに、突然現れた。

田舎にはありがちな風景だが、ホテルの周りは畑に囲まれており、その背後には夜の闇とひっそりと共生する黒い木々に覆われた不気味な山々が控えている。

こんなところにラブホテルがあったのか…良雄は意外に思い、暗い中で鮮やかに光り輝くネオンを他人事のように眺めていたが、車が国道からホテルの駐車場に向かうと、気分は一変して一気に緊張してきた。

当然ながら、良雄はラブホテルに入ったことなど一度もない。

良雄には、その駐車場の門が自分を呑み込む巨大な怪物の口のように思われた。

奈津子が車を駐車場の一番奥の角に停める。

二人、車を降りて入り口に向かって歩く。自然と奈津子が良雄の前を行っていた。その靴を鳴らす音が、コンクリートに低く狭く囲まれた駐車場にコツコツと響く。

入り口は一人しか入れないくらいの狭さで、入ると二人が立てるくらいのスペースがあり、そこの壁に部屋の写真がいくつも収められたパネルが掛けられていて、二人の選択を待っている。

「 ここでいいよね? 」

奈津子が緊張して固くなっている良雄をチラと見て二階の部屋のパネルのボタンを押す。

そこのスペースから二階に続く狭い階段を、奈津子の後ろについて良雄が上がる。階段に敷かれた紅いカーペットが、二人の足音を吸収して秘密の静けさを演出し、甘い情事を隠匿するきらびやかな部屋へといざなう。

二階に上がり、見ると、奥のほうの壁の上部に奈津子が指定した部屋の番号が入っているプレートがこちらに向かって明るく点滅して、あなたがたの選んだ部屋はここですよと二人を招いている。

部屋の鍵は開いていた。

薄明かりの中、二人とも無言で靴を脱いで入ってゆき、奈津子はすぐに電気のスイッチを見つけて部屋を明るくした。

古い洋風の電話が鳴り、奈津子が受話器を取る。「はい、休憩です。」と言って電話を切り、財布から千円札を何枚か取り出して部屋の入口に向かった。

しばらくしてドアがノックされ、奈津子が少しドアを開けて何枚かの千円札を隠れるように立っているホテルの従業員に渡した。

良雄は、黙ってその様子を見ている。

奈津子は戻ってきて暖房のスイッチを入れる。妙にてきぱきとして、慣れた雰囲気だ。

「 もうすぐ暖かくなるからね。 」

奈津子はそう言って洗面台に行き、水を出して手を洗う。しばらく洗って振り向くと、すぐそこに良雄が立っていた。

ハッとして瞠目する奈津子を、良雄はひしと抱き締めた。