官能小説「放課後の夜」五十三 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

官能小説「放課後の夜」五十三

二人共、少し早めの晩餐に舌鼓を打つ。奈津子に勧められて頼んだ肉料理は、厚く柔らかく、肉の旨味が口の中いっぱいに広がって、奈津子の色気にばかり集中している良雄の意識を、一瞬とはいえその肉に向けさせた。

「 うまいっすね、この肉。 」

「 ね、おいしいでしょう? 」

奈津子も笑みを浮かべて同じ肉を頬張る。

上質な料理の味が、まだ少しぎこちない二人の中にある沈黙の間を埋めてゆく。

全て食べ終わると、窓に映る外の景色はすっかり暗くなっていた。

「 ごちそう…さまでした。ありがとうございます。 」

良雄は奈津子に礼を言う。値段が書かれた紙はもう奈津子の手元にある。

「 いいんだよ。波川くん、いつも頑張ってるんだし。 」

奈津子のその言葉に、良雄は面映ゆく思う一方で、なんとも言えない幸福感に胸を満たされる。今までの奈津子に対する自分の言動を、全て肯定してくれたような気がしたのだ。

「 俺…先生ともっと深く…仲良くなりたいんです。 」

「 仲良く?もう仲良くなってるじゃない? 」

「 いや…なんて言うか、もっと深く、ですよ…。 」

良雄の言葉を受けて奈津子は微笑む。何も言わずに。

言いたいことが伝わったのか、それともからかっているのか。わからなくて良雄は焦れったくなり、

「 先生はどう思ってるんですか?俺のこと。男として…。 」

と踏み込んだ質問をする。

「 男として?うん…男らしいと思うよ、波川くんは。 」

「 マジっすか!? 」

単純に喜ぶ良雄。

「 うん、まあ…まだ少し不器用なところがあるけど、そこは、これから大人になっていけばね…。 」

奈津子のその言葉に、良雄は一瞬、暗然とする。

(大人になれば?ああ…まだ俺はガキだってことか…。)

が、自らを鼓舞して言葉をつないだ。

「 それなら、先生が俺を大人にしてくださいよ。 」