官能小説「放課後の夜」四十九 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

官能小説「放課後の夜」四十九

奈津子は、何も言わずにメモ用紙を受け取った。

言葉を交わすこともなく、良雄は引き返してまた教室に入る。

メモには、今日の放課後に逢いたい旨を記してあるのだが、果たして奈津子はどう思うのだろうか。

放課後までには時間がある。まだ午前中なのだ。放課後まで長くなりそうだ。

涼子のほうを見る。良雄が早足で教室を出た様を見ていただろうか?

休憩時間にざわめく生徒たちをよそに、涼子は机の上に本を広げて読んでいた。

確証はないが、何も見ていなかった気がする。

さっきまで高鳴っていた鼓動が収まってきた。

(先生はきっと来てくれるだろう。来たらどんな顔をして迎えたらいいんだ?)

(いや…やっぱり、しつこいヤツだと思われたんじゃないかな…。来ないんじゃないか?)

二つの相反する思いが、放課後になるまで激しく交錯して良雄を悩ませた。

そして、その日の全ての授業が終わった。

短いホームルームも終わった。

例によって良雄は、少しやつれたと思われるほど待ちくたびれた顔になっていた。

「 う~い帰ろうぜ、波川! 」

達也がいつものように声を掛けてくる。

「 おう、帰ろうぜ。 」

良雄は応えた。奈津子との待ち合わせの時間までは、あと一時間ほどある。断って変に怪しまれるよりは、いつものように途中まで一緒に帰り、そのあと急いで家に戻って着替えて待ち合わせ場所に向かったほうがいい。

良雄は達也の軽口に合わせて適当に相槌をうちながらも、頭の中ではこれからの奈津子との逢瀬に多大な期待と不安を膨らませていた。