官能小説「放課後の夜」三十三 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

官能小説「放課後の夜」三十三

翌日、良雄はいつにもましてやる気が起きない。理由は簡単、この日は奈津子の授業が無いからだ。

昨晩も、そして今日の朝起きた瞬間も、良雄はあの保健室での出来事をうっとり官能的な気分を味わいながら反芻していた。

昨日の奈津子とのキスは、記憶の宝箱を絢爛と飾る華となって良雄を永遠に勇気づけるかと思われた。が、その反面、一日でも会えないと思うと辛くて胸が締めつけられるようだ。

恋の病、三秋の思い。良雄は今日も明日も奈津子に会いたかった。いや、はっきり言えば今すぐにでもあの時みたいに濃厚なキスをしたかった。

それは快楽への欲求であると同時に、互いの想いを確認する聖なる儀式への渇望でもある。まだ奈津子と十分に言葉を交わしていない良雄にとって、その意味合いは特に強かった。

(そして、できればその先も…)

良雄の欲望も秘かにエスカレートしていく。

しかし、実際に会うことができなければ何もかもどうしようもない。

良雄は黒板に書かれている今日の時間割を呪詛に満ちた目で見つめる。溜め息をつく。今日は本当に会えないのか。

虚しく寂しい心に、昨日のもう一つの記憶がふと甦る。

涼子のあの話。

「 波川くん、今のあんたには信じられないかもしれないけど… 」

あんた…涼子にそんな言われ方をしたのは初めてだった。

ムカッとくる。気の強い女だ。

「 奈津子先生はね、結婚して二人の子供もいるのに、全然関係ない他の男とも付き合ってんのよ。 」

それは確かに衝撃的な話だった。が、その時の良雄は話の真偽よりも、涼子のなんとも言えない圧倒的な態度のほうが気になって鬱陶しくて仕方なかった。

「 だから何だよ。そんなもんほっとけよ。 」

吐き捨てるように言って、良雄は涼子を振り切った。

(あの話…本当なのだろうか?くそ、もう少し詳しく聞いておくべきだったかな…。)

気になることではある。だから、なおさら奈津子に会いたい。

授業が始まっても、昼休みが終わってまた授業に入っても、良雄は奈津子のことばかり考えていた。大事な時期だというのに。

(…そうだ、放課後、駐車場で先生を待ち伏せしてやろう!)

静かにみんなが授業を受けている中で、良雄はそんなことを思いついた。

(先生は驚くかもしれないけど…いや、理由はちゃんとあるんだ。噂の真相を聞き出して、それから…)

良雄の恋心が捻れながらも再び蠢き始めた。