官能小説「放課後の夜」二十三 | かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」

官能小説「放課後の夜」二十三

放課後の進路指導室はしんと静まり返っていた。

八畳ほどの狭い部屋で、入口の向かい側には大きなガラス窓があるが、職員室がある通りの奥、保健室の隣にあるこの進路指導室は、放課後の部活動に向かう生徒達とも、帰宅する生徒達とも隔絶された感じで、まるで異空間に迷い込んだような錯覚に陥る。

「 なんかちょっと暗いねえ~ 」

奈津子は呑気にそう言って中途半端に閉まりかかっていたカーテンを全開にする。

窓の向こうには空き地を隔ててコンピューター室や家庭科で使う教室が並ぶ校舎があるが、授業が全て終わった今は人の気配もない。

さぞかし奈津子は怒っているだろうなと良雄は思っていたのだが、ここまでの奈津子の態度はいつもとそんなに変わっていないような気がする。ホッとするような、なんかもの足りないような、複雑な気分だ。

細長いテーブルを二つくっつけた向こうにあるパイプ椅子に奈津子が座る。

「 どうぞ、波川くん座って? 」

奈津子が優しく対座するように促すが、良雄は返事もしないでぶっきらぼうに座る。

「 どうしたの?具合悪いの? 」

奈津子が心配して良雄の顔を覗きこむ。

「 いや…具合は悪くないです。 」

「 そう…でも私、心配になっちゃってね。わかるでしょ?このテスト… 」

奈津子は例の白紙のテスト用紙を良雄の前に差し出す。

「 波川くんが白紙のまま出すなんて今までなかったから、これは何か理由があるんだろうなって思ってね…何かあったんなら、何でもいいから話してくれないかな?別に怒ったりしないから。 」

そう言って奈津子は穏やかに良雄を見据える。けれども良雄はそういう奈津子の大人の態度にかえって苛立った。

(話す?何を話せっていうんだ…俺の正直な思いをぶちまけたら、先生、あなたはどうしてくれるんですか?僕の全ての欲望を受け入れてくれるんですか?ああ、今の僕の目には、あなたがとんでもない偽善者のように映ってしまう…)

二人だけの静かな空間で、良雄は追い詰められて奈津子に襲いかかる自分を予感し、それと同時にそんな自分を恐れた。

無言の良雄と、答えを待つ奈津子との間に気まずい空気が流れる。

その時、良雄が席を蹴るような勢いで立ち上がった。