私とほぼ同時期に入った男メンバーで、OGりんという人がいた。

彼は、一時期連盟に身を置き東京で頑張っていたが、残念ながらプロとしての芽が出ずにこちらに帰ってきたという過去があった。


MTさんの古くからの知り合いでもある彼は、その麻雀をとても馬鹿にされていた。


OGりんは、彼の話を聞いている分には麻雀に関する知識量が凄まじく、言っていることにもとても説得力がある。

が、彼の打つ姿を目の当たりにすると、その説得力もたちまち失せてしまう。

他店と比べても弱いと言われているうちのお店の客相手にも、彼はメンバーアウトを月トータルでほとんどプラスに出来ることはなかった。


MTさんが言うには、

「確かに知識はあるけれど、実戦でそれを引き出せないんだよ。」

ということだった。


OGりんは、

「メンバーとしての本走だと麻雀に集中が出来ないから勝てないんだよ!」

という言い訳をしていた。

が、MTさんい言わせれば、普通のセットの際でも、たとえば

「誰かが『リーチ』といえばもうその人の河しか目に入らなくなって、危険牌を押してる親に気づかずにインパチ刺さったり」

するらしい。

確かにそれでは、「仕事上集中できないせい」というのは苦しい言い訳に思える。


OGりんは女の子のメンバーからも馬鹿にされるようになり、褒められることといえば

洗牌のスピードと、打牌スピードくらいのものだった。


しかしそんなOGりんも、今じゃちょっとした有名麻雀ブロガーらしい。

あれだけの知識量があれば、文才があればいい感じにまとめられるだろうし。

でも、やはり会うといまだに彼はみんなに馬鹿にされてる気がするよ。


OGりんが優しいから、いじられキャラになっちゃったんだろうけどね。

営業時間の拡大に伴い、私のシフトを増やしたところで、やはりお店には人手が足りなかった。

新たなメンバーを募集してみても朝番を希望する人が多く、既に朝番は飽和状態。

その半面夜番に至っては、入れる女の子はFMちゃん一人しかおらず、その負担が彼女に大きく圧し掛かっていた。

そんな中ついに、夜番に待望の新しい女の子が入ることになった。


彼女は、JTちゃん。

彼女の強みは初めから麻雀を知っているだけではない、この店では珍しく、フリーに普通に通っているような女の子だったのだ。

これはお店としても、期待が持てる。


またJTちゃんは、自分の雀力に自信を持っていた。

その自信に間違いはなく、彼女は入ってすぐに頭角を現し、女の子のメンバーアウトがほぼ全員マイナスだったのに対し彼女は大幅なプラスを叩き出していた。


性格は強気で勝気な感じだった。

そんな彼女とFMちゃんが衝突するのではないか、とみんなの心配をよそに、彼女達は意外にも一緒に他店に打ちに行くほど仲良くなっていた。


私は、JTちゃんが苦手だった。

入ったばかりの頃、MTさんに言われたことがある。

YRさんに逆らっちゃダメだよ、辞めさせられちゃうよ」


は?どういうこと?

それが、私の率直な感想だった。


YRという名は初めからメンバー名簿に載っていて、けれど実際には一度も見たことがない人だった。

だが彼女は従業員ではなく、店長の恋人だった。

表向きは

「店長と、女の子のメンバーの間に入って意思の疎通を助ける存在」

ということらしいのだが、実際はどうやらとんでもない人らしい。

自分が気に入らない女の子はすぐに辞めさせる、というのだ。


私がお店に入る前、ある女の子がいた。

そして、男性オープニングスタッフのYDさん。

その女の子はとても覚えが悪く、失敗が多かったそうだ。

YRさんはその子が気に入らなく、店長に辞めさせるように言った。

それを知ったYDさんが店長に直々に掛け合った。

「彼女はまだこれからだから、長い目で見てあげてください」

と。

店長は、「わかった」と答えた。


だがその次の日YDさんが出勤してみると、その女の子はクビになっていた。

どういうことだ、話が違うじゃないか!とYDさんは激怒し、「そんな店長は信用できないし、ついていけない」と店を去ったそうだ。


ちょうど私が店に入った頃、YRさんは病気の具合が思わしくないらしく、入院だかなんだかで店に姿を見せることはなかった。

それでも、私の頭にはしっかりと、気をつけなければならない存在としてインプットされたのだった。