当事店に男性スタッフは、MTさんとOGりん、店長の三人だけだった。


店長は、店長兼オーナーだった。

自分ひとりの力で店をオープンさせ、軌道に乗った今、自分は店長の座を退き経営のみに専念しようと考えていた。

というよりも店長は主に夜番に入っていて、体がしんどかったようだ。

いつも疲れた顔をしていて、なんだかげっそりしていた。

自分の体力的な問題もあり、そのためにも、次に店長となる人材を早く見つけ、育てたいと思っていた。


元々麻雀経験すらない女の子を多数採用していることもあり、男性スタッフの採用条件は、「メンバー経験があること」が絶対条件だった。

MTさんもOGりんも辞めてしまったKMちゃんも、みんなメンバー経験があり女の子をサポートできる人材だった。

だが店長から見て、お店を任せられるほどの人物はいなかった。


MTさんは若く仕事に対していい加減な面があり(何ゲームもゲームボードを書くのをサボったり、ドリンクを聞かなかったり)OGりんは、年齢はともかく頼りない(元々の能力な気がするが、本人は一生懸命でも仕事にミスが多かった)

OGりんに関しては育てようといろいろ頑張っていたようだが、なかなか期待通りの動きを見せてもらえなかったようで、結局店長は匙を投げてしまった。


そこで結局、新しい人材確保に乗り出した。

JTちゃんが入ったことでなんとかシフトが回るようになったが、店長は依然夜番の人不足に悩んでいた。

中番のNNちゃんや朝番のMKちゃんがときどき深夜に入っていたが、

そんな変則シフトでは彼女達の体もきつい。

だが、夜番は他の時間帯より少しだけ時給がいいこともあり、MKちゃんは積極的に入りたいと思っていたらしい。

JTちゃんは入ってすぐに週46日はシフトに入り、既に夜番になくてはならない存在になっていた。


お店にとって貴重な夜番であり大事にされたことと、JTちゃんは強気な性格も手伝ってか、傍から見てちょっと態度が大きいように感じられた。

「私が人のいない夜番に入ってあげてる(・・・・)んだから」

と言ったこともあった。


ある朝、MKちゃんがついにキレ、それに反論した。

JTちゃんはそれでいいかもしれないけどさ、私だって夜番入りたいのにあんたがいっぱい入ってるから入れないのよ」

と、帰る前のJTちゃんに言った。

そこからしばらく店のカウンターで、夜番のFMちゃん、JTちゃんとMKちゃんの言い争いになった。

店内には、お客さんもいた。

せめて裏でやって欲しかったが・・・もう止まらないよね、そうだよね。


そして、MKちゃんはめちゃめちゃ怖かった。

あの強気なJTちゃんが完全に言い負け、泣きそうになってるように見えるほど。


MKちゃんは怒らせてはいけない、と心に刻んだ。

入ったばかりのJTちゃんから見て、私の存在は気になるようだった。

以前にも書いたとおり、JTちゃんは自分の雀力に自信を持っている。

そんな彼女に、誰かが言ったのだ。

「ももちゃんがお店で一番強い女の子だ」と。


私はJTちゃんとはシフト時間が完全にズレていて、彼女が帰る時間に私が出勤していた。

それでも、彼女が帰る前に話しかけてくれたりしていて、朝は暇なことも多かったので話す機会は結構あった。


強いんでしょ?みたいなことを聞かれたこともあった。

そしてJTちゃんは、メンバーアウトを見て言う。

「でも、私のほうが勝ってる」


私はずっと遊んでいたネット麻雀のルールが染み付いていて、それ以外のルールで打ったこともほとんどなく、働き出して4ヶ月弱がたったそのときもお店のルールに対応が出来ないままでいた。

メンバーアウトも、マイナスを少しでも抑えることでいっぱいいっぱいというのが現状だった。

数字で見る結果ではJTちゃんの方が圧倒的に強い。

それなのに周りからももちゃんが強いと聞かされ、彼女はどうしてもそれが解せなかったようだ。


ある日、朝一番で私が本走していた。

すると、帰り支度を整えたJTちゃんが私の後ろに立った。


その局、私の手はとても形にならない状態で、他家から先制リーチがかかった。

いける状態ではないので当然の如く、私はベタオリ。

彼女はそれを、ずっと見ていた。


結果流局し、牌を落として次局に向かおうとしていると、JTちゃんは出口に向かいながら店中に響く大声で言った。

「オリてるだけでつまんなーい!」


彼女を、苦手に思うきっかけの一言だった。