『うん。本当にゴメンね。………これは、本当は君に仕掛けられた【逆ドッキリ企画】なんだよ……』
モニターから響く敦賀蓮の言葉に
ええええええええええええええええええっ!?
観客と出演者の悲鳴のような叫びがスタジオ内にこだまする。
司会者に注目が集まると、
「実はそうだったんですね~!!
知っていたのはスタッフを除けば俺と敦賀さんだけ!!
いや~京子ちゃん含め皆さん見事に騙されてましたね~」
と満足そうに笑う。
などというスタジオの進行を無視する蓮は、眼と口を開けたまま固まってしまったキョーコが気掛かりで仕方なかった。
『あの……最上……さん?大丈夫?俺は…』
覆いかぶさった姿勢から身を起こし、恐る恐る呼びかける蓮。
先程までの夜の帝王と同一人物とは思えないほど、オロオロと瞳をさ迷わせている。
『な………え………?騙して……たんですか……逆ドッキリって……全部、嘘、だったって事…?……ひどい……!!』
しばらくの間呆然と固まっていた
キョーコは激しく蓮を睨みつけ、肩をぶるぶると震わせる。
剥いたままの眼にみるみる涙が溜まっていく。
『もが……』
『私……!!必死だったんです!!』
蓮を鋭く見つめたまま叫ぶ。
『いつまでたっても色気もなければ可愛くもなく、お淑やかですらない!!
……だけど……頑張ろうと思った……!
普段の自分を忘れて、心の底からナツになって、貴方に釣り合う大人の女性を演じきるんだって……思っていたのに………!!
他の女性と話してる敦賀さんを見てたらどんどん不安になって、貴方を目の前にしたら、また何も出来ずに逃げ出したくなるんじゃないかって……』
『それで、あんなに酔った状態で俺の前に現れたのか……』
『そうです……!でも!!ナツになりきれなかった……!敦賀さんのあんな……艶めか妖しい態度に本当にドキドキして、心臓なんて弾けて飛び出してしまうんじゃないかって思うくらいだったのに…!!
それもみんな私を騙すためのお芝居………嘘、だったんですよね!!
そうですよね……こんなマヌケでバカ女な私なんて、やっぱり騙されて、裏切られて当然なのに……わかってたのに、油断してたわ……ずっと警戒していたのに……馬鹿みたい……!!』
口を挟む余地もないほどのスピードでまくし立てると、溜まった涙が眼から溢れ出し、流れ落ちる。
『在りもしないものに期待しても、絶望するだけだって、知っていたのに……本当に、私は駄目な人間なんだって……』
『それは違うよ。俺は……』
蓮はキョーコの肩に手を掛け、宥めるように言う。
『企画自体はドッキリだけど、騙す事なんてしていない。全部本当の、俺の気持ちだ。言った台詞も、した行動も、全部…『まだ続いているんですか?もう止めて下さい!!…十分でしょう?もうさんざん、私のマヌケな姿が撮れたはず。………もうこれ以上は、堪えられそうにありません。だから……お願いですから……離して下さい。………私に触らないで!!!』
蓮を遮って言うキョーコは悲しみに沈んだ瞳を、後から後から流れ出る涙でも浮かび上がらせる事が出来なかった。
拒絶の言葉で切り付けるキョーコの瞳を受け、強烈な痛みに堪えるように蓮は呻いた。
『……んだ…』
『え?』
『違うって言っているんだ!!!嘘なんかじゃない!!!』
キョーコは声量に驚き大きく身体を跳ねさせた。
続く