「やあっこんにちは(^-^*)/ブライアン。また会えたね」
ずざざあぁぁ~!!ぷっきゅ~~~~ぅ!
収録を終えた私を待ち構えていたかのようなタイミングで現れた敦賀蓮様の登場に、坊の着ぐるみのままずっこけてしまった。
な、ななななんで居るのよおぉーー。゚(゚´Д`゚)゚。
その名には未だに慣れない。私にはれっきとした『最上キョーコ』という名があるのに…今は仮の姿『ブライアン』こと『坊』なのだ。
「や、やあっ!敦賀君じゃないか、元気そうだね。僕に何か用なのかい?」
警戒しつつ精一杯明るい口調で尋ねる私。
「うん。実は…このあと時間あるかな?あるよね?」キュラ☆
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
私達は人気の少ない雑多なスペースに並んで座っている。
何故またこのパターンに……
私は、内心の当惑をしまい込み尋ねる。
「……で?用っていうのは…?」
「うん。いや、いつも俺ばかりが相談にのって貰っていて悪いなあと気づいて。それで、君の悩みも聴いてあげたいな、と思ってね…」
…え?な、悩み?
「…僕悩みがあるなんて言ったかな?」
「悩みくらいあるだろう?人間なんだから」
「いやそんな極論を」
「そうだ。ブライアン、君の好きな人ってどんな人なんだい?是非聴いてみたいな☆」
さも名案だと言わんばかりにさわやかに笑う。
でも何かしら?この迫力は。
「いや、僕には」
「まさか居ないなんて言わないよね?俺には『それは恋の前兆なんだよ』とか偉そうに言ってたくせに自分は恋をしてないだなんて、そんな訳ないよな。もしそんな人に相談なんかしていたんだとしたら、俺ショックだな。
…ショック過ぎて何をするかわからないよ…?」キュララララ☆
ひいい!!微笑ってらっしゃるぅ!!そして何気なく凄い事言ってるし!?
「はは、そ、そんな訳ないじゃないか…僕だって恋の一つや二つ…そりゃあるさ。でもさあ、わざわざ相談なんてするほどの事は…」
「俺の話を聴いておいて自分は話さない、なんて虫が良すぎるとは思わないか?」
敦賀さんは目を剥き、陰を背負い、こちらを見下ろす。
坊の顔面スレスレで。
今度は闇のオーラで魔王降臨とかーー!?
ヤメテ下さい!!チンピラのガンツケですかーー!?
「わかった!わかったよ!!話す!!話しますから!!どうか気をお鎮め下さい~」
私はへいこらと頭を下げる。
敦賀さんは先程の不機嫌さを綺麗に取り去り、何かを期待するようなキラキラした目でこちらを促してくる。
「そ、そんな楽しい話じゃないと思うよ?」
「もちろんいいさ、そんなのお互い様だろう?なんだって言ってごらん?」
ずるいな…
その優しい眼差しは…
一瞬で心を掴んで
口を開かない訳にはいかない
そんな気にさせられてしまう。
本当にこの人は……罪深いヒトだ。
「…その人は……
自分の好きな事にとってもひたむきで、何をおいてもまっすぐに貫き通す。そんな強さを持っていて」
とつとつと話す私を
敦賀さんは神妙な顔つきで見つめる。
「僕はその姿が羨ましくて…憧れて、尊敬して。いつのまにか、ずーっと見ていたい…なんて…思うようになってしまっていた-」
話し始めたら 止まらない。
私は続ける。
「その人が独りで辛そうにしていると、もう、いてもたってもいられない。どうにかして、何か役に立てないものか…そう思うようになっていた。
…他の誰かを想っている。それでも僕は、その人の助けになりたい。
……なーんてね!!ハハハ!!…な、面白い話じゃないだろ?」
ばつが悪くなって、私は笑い飛ばし、敦賀さんの方を見ると…
「君も、同じ気持ちだったんだね……」
「え……?」
何かに堪えるように目を細めている。
微かな声だが確かに聞こえた。
同じ気持ち?
「だが、俺の場合は、その人を護る権利を他の誰かに譲るつもりはないがな」
その瞳がギラリと光る
息が止まりそうなほどに鋭く-
「で、でも、その人が他の誰かを想っていて、それで幸せなら、それを邪魔するなんて…!!」
私が焦って言い募ると
ふうっと息を吐き、
「君は覇気がないんだな。それでも男か?俺なら
誰よりも幸せにしたい。この俺の手で」
じっと目を見つめられて
自分に言われた訳でもないのに
ドクンドクンと
胸の鼓動が鳴り止まない-
「その二人がたとえ天が定めた運命の二人だったとしても、従ってなんかやらない。
これからは
俺は逃がすつもりはない。絶対に」
どうしてそんなに見つめるの?
ヤメテ オネガイ
ムネガ イタイカラ
私に向かって言わないで
これ以上は
堪らなくなって 私は敦賀さんに背を向けてしまう。
「…それだけ君に想われているなんて…幸福な人だね。なんだか羨ましいな」
私がそう言うと、敦賀さんは
「君はもう少し欲を持った方が良いと思うよ。それだけ相手を想っているのなら、きっと見返りはあるさ」と言った。
「そうだといいね」見返り、ね……私は答える。多少そっけなく聞こえたとしても、しょうがないわよね。今の私にはこれが精一杯だから……
「無理に聞き出して悪かったね。ありがとう。ブライアン」
と敦賀さんが耳元で言うと
不意に視界が陰る
敦賀さんの顔が坊の頬に近づき-
-チュッ-
唇をつけた-

へ?
は?
な?なななななな///
「き、君は着ぐるみ相手に何をしているんだね!?気は確かか!!??」
私が飛び上がって言うと
「何って…お礼と挨拶だよ」可笑しそうにでもとても優しい声で言った。
そんなんで納得出来ないわよ!!本当に日本人ですか!?貴方は///!?
「お礼だったら誰にでもするんだね君は!!日本人に対してこんな過剰なお礼は迷惑にもなるんだぞ///!!」
私が声を荒げて抗議すると、
「失礼な。本当に大事だと思った人にしかしないさ」と言った。
え…?じゃあ私もそれに含まれるって事なの?…坊と同列だけど。
私が二の句をつげないでいると
「ああ…もう時間だ…名残惜しいけど、今はこれで勘弁してあげる」
勘弁て何!?
私は頭が混乱してきた。これ以上何をする気だって言うのよ!?この人は!!
「そして…俺は君にまだ言ってない事があるんだよな。どうか、もう少しだけ待っていて欲しい」
と、坊の肩を両手で掴んで身を乗り出しながら言った。
いきなりの真面目なトーンに、私は気になって聴いてみた。
「…それも、大事な役が終わってからなのかい?」
「そう…そうだね」
「そっか。じゃあ待ってるよ。…無事に終わるといいね」
敦賀さんは、物言いたげな瞳で私を見ると
「本当にありがとう。君にはお世話になりっぱなしだね。今日だって結局役に立ててないしな。…また会おう。必ず」
そう言ってその場を後にした。
なんなのよもう……!!
人の心を掻き乱すだけ掻き乱しておいて…
嵐のように去って行くんだから……!!
それでも目を離さずにいられない
敦賀さんが見えなくなるまで
その背中を
どうしても 私は
見守り続けてしまうのだ
続く