「消費税率については、法律で定められたとおり、平成31年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる予定です」と安倍晋三総理が発言(*1)したそうです。


法律に書かれているので、その通りに税率を引き上げるとの発言ですが、安倍総理には二度の増税延期という「実績」があります。


将来の増税や社会保障負担増加があると、安心してお金を使う人が減ってしまうかもしれません。連立政権を組む公明党の代表も経済への影響を心配しているようです(*2)。


安倍総理の発言(*1)に戻ります。

“5年半に及ぶアベノミクスの推進により、生産年齢人口が450万人減少する中においても、経済は12.2%成長しました。そして雇用は250万人増え、正規雇用も78万人増えました。”(*1)


アベノミクスで前に飛んだと言える矢は第一の金融政策くらいではないでしょうか。

雇用改善は大きいですね。しかし、非正規の割合が高いこと賃金上昇の伸び率が低いこと、20年にも及ぶデフレ&名目GDPゼロ成長などを考えると、楽観視出来る経済状況と言えるかは疑問です。


“今こそ、少子高齢化という国難に正面から取り組まなければなりません。お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと、大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていきます。”(*1)


大きく転換すべきは、逆進性のある社会保険料と消費税により社会保障を支えようとすること、(IMFによると純債務はほぼゼロ)健全な財政を増税により更に「健全化」しようという不健全な発想ではないでしょうか。


“今回の引上げ幅は2%ですが、前回の3%引上げの経験をいかし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応します。”(*1)


前回の経験が何を指すのか分かりませんが、消費税率8%への引き上げ後に分かったことは


1)2013年度補正予算などで2014年度の消費税率引き上げに伴う増収分と同等の5.5兆円規模の財政支出拡大をしたが、2014年4月以降は消費が大きく落ち込み、消費の水準が駆け込み需要前に戻るまでに4年程度かかった。


2)消費税引き上げによる税収は、社会保障の充実には少ししか使われず、「借金」返済に充てられた。


ことなどでしょう。

2)については、金子洋一さんのブログ記事(*3)が詳しいです。


では、安倍総理の全力の対応について評価してみましょう。


“第1に、消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元します。来年10月1日から、認可・無認可合わせて幼児教育を無償化します。”(*1)


消費税率引上げ分の半分を国民に還元する、ということは、税率引上げ幅を半分に出来るのではないでしょうか。

幼児教育無償化の恩恵を受けることが無い家計は、取られっぱなしで還元されないことを意味しますね。それなのに、これから生まれる「将来世代」にも消費税率10%という重い負担を強いることになってしまいます。


これでは、沖縄県知事選の与党側候補の敗北に続き、2019年の統一地方選挙や参院選挙が心配です。「健全な財政」を活かして、増税凍結のうえ、幼児教育無償化など、必要な財政支出を行なってはいかがでしょうか。国民からの支持が更に拡大するのではないでしょうか。



“第2に、軽減税率を導入し、家計消費の4分の1を占める飲食料品については、消費税を8%のまま据え置きます。軽減税率の実施に向けて、準備に遺漏無きよう、よろしくお願いします。”(*1)


家計消費における負担を「軽減」ではなく、一部「据え置き」するのですね。軽減税率の対応は、弱者対策としての効果は乏しいうえ、煩雑な事務処理、人手不足で喘ぐシステム業界の人手を軽減税率対応へ向かわせるなど、機会費用が大きいように思います。消費増税を凍結して、給付付き税額控除など、税と社会保障の充実へ向けて、3年で大改革をされてはいかがでしょうか。



“第3に、引上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じます。消費税引上げ後の一定期間に限り、中小小売業に対し、ポイント還元といった新たな手法による支援を行います。さらに、商店街の活性化のための対策もしっかりと講じます。

 また、消費税の引上げ前後で消費者の皆さんに安心して購買いただくために、消費税引上げ前後に柔軟に価格付けができるよう、ガイドラインを整備します。もちろん、同時に、中小企業が取引先に対して、消費税を円滑に転嫁できるよう、対策を講じます。”(*4)


あれれ〜おかしいな〜「前回の3%引上げの経験」を活かすのであれば、駆込み需要その反動減だけではなく、税率引上げ後は恒久的に実質所得が減ることで、消費停滞が長引くことへも対応すべきなのではないでしょうか。

消費税率1%で増える税収は2.7兆円程度だそうで、一部教育無償化と軽減税率により、家計負担は2兆円程度という日銀試算(*4)があるそうです。

2兆円程度であれば、品薄とされる国債発行で十分賄える額ではないでしょうか。

一時的なポイント還元や煩雑な軽減税率などへの対応という機会費用も節約したいので、増税凍結をすると良いのではないでしょうか。



“第4に、消費税負担が大きく感じられる大型耐久消費財について、来年10月1日以降の購入にメリットが出るように、税制・予算措置を講じます。”(*1)


消費税負担を小さく感じさせるには、大きく所得を増加させて、先行きも所得増加が続く(当たり前になる)ような経済環境を作るか、消費税率を引き下げるか、いずれかが良いと思います。所得増は金融政策で緩やかに働きかけることは出来ますが、政府が直ぐに出来ることといえば、消費税率の引き下げではないでしょうか。

文書改ざんや国会での虚偽答弁などを行った団体による「財政危機」は作られた「実在しないもの」ですし、消費増税引上げ自体をやめ、元の5%に戻してはいかがでしょうか。海外ではマハティール氏は消費税(6%)を廃止(*5)したそうです。



“こうした対策に加え、国民的な関心事となっている防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を更にしっかりと講じてまいります。”(*1)


国民の生命財産を守るための投資、教育など将来への投資を速やかに実行していただきたいものです。



“来年度、再来年度予算において、消費税対応で臨時・特別の措置を講じてまいります。消費税率引上げによる経済的影響を確実に平準化できる規模の予算を編成してまいります。”(*1、了)


消費税率引上げによる経済的影響は単年度だけでなく恒久的に続きます。先程の対策案を見ると対策の恩恵を受けるのは一部の国民に限られます。しかも、経済は生き物ですので「確実に平準化できる」ということは難しいでしょう。

「確実に」ということでしたら、税率引上げを凍結するのがピッタリきます。

増税凍結しようとすると「善意で増税多数派工作する団体」(*6)が邪魔をするかもしれません。


デフレ脱却と名目GDP600兆円を想起実現し、憲法改正に政治的資源を集中させるためにも、拡張的な金融財政が求められます。

経済最優先を掲げて実行する総理・政権であれば頼もしい限りです。


消費税率8%への引上げを確定した会見(*7)は、安倍総理らしさよりも官僚の作文っぽさを感じました。

その後、二度(*8)(*9)の延期会見がありました。

三度目の延期は無く、凍結をお願いしたいところです。

マクロ経済の失政よって「奪われた20年」を少しでも「取り戻す」ためにも。



(*1)平成30年10月15日 消費税率引上げとそれに伴う対応について(臨時閣議における総理発言) | 平成30年 | 総理の指示・談話など | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/181015comment.html


(*2)公明代表「商品券」に意欲: 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36647920Y8A011C1PP8000/


(*3)消費増税をめぐる2つのインチキ

http://blog.guts-kaneko.com/archives/866


(*4)10%への消費税率上げ、家計負担「2兆円どまり」 日銀試算: 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30032140R00C18A5EE8000/


(*5)消費増税廃止、マハティールにできて安倍首相にできない道理はない

https://ironna.jp/article/9754


(*6)「善意で増税多数派工作する団体」 

https://ameblo.jp/shinchanchi2015/entry-12098400036.html


(*7)平成25年10月1日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成25年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/1001kaiken.html


(*8)平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成26年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1118kaiken.html


(*9)平成28年6月1日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成28年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0601kaiken.html