消費増税の推進に力を貸しながら軽減税率適用を求めた新聞業界の一社、20181016日付日経社説(*1)が残念過ぎる。


デフレ脱却を求め、不要な緊縮策との決別を求める一人として、消費増税反対の立場から批判的に社説を見ることにする。



民間企業も増税後に魅力的な新商品を投入するなど、政府ばかりに頼らずに消費落ち込みを防ぐ努力を求めたい。”(*1)


反動減を心配しすぎて、不効率な歳出を増やすのでは財政健全化に逆行する。”(*1)


繰り返します。

消費増税の推進に力を貸しながら軽減税率適用を求めた新聞業界の一社」の社説です。軽減税率に頼らない魅力的な新聞を作る努力とは言わない。

財政健全化にも資するデフレ脱却の経済政策により日本の国家財政が大きく改善していることはIMFですらご存知(*2)のようですが、未だに財政危機を喧伝する。


日本の場合、負債額はGDP283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日本の「純資産」はほぼプラスマイナスゼロ”(*2)


IMFのレポートは「世界一の借金大国」とのイメージとは異なるものだ。

分かり易い解説は、田中秀臣氏(*3)、高橋洋一氏(*4)の各論考を参照いただきたい。



日経社説(*1)に戻る。


財政支出に依存する経済体質を助長しないことが大切だ。”(*1)


不要な緊縮策(消費増税)により、不要な財政支出の検討を余儀なくされているのであるから、不要な緊縮策をやめる、とは言わない。


政府は15日、西日本豪雨の災害復旧などに充てる18年度第1次補正予算案を決めた[中略]この結果、6950億円の国債増発を余儀なくされる。”(*1)


補正予算(*5)を見ると、災害からの復旧・復興に7,275億円、学校の緊急安全確保対策に1,081億円、予備費追加に1,000億円の計9,356億円の支出となっている。

歳入のうち6,950億円は公債金(建設国債)にて賄うとされる。国債品不足が言われる中、小規模ではあるが、喜ぶべきこではないのか、と。

債券市場関係者や金融機関よりも、財務省が言う財政危機へ配慮したものだろうか。


日経社説は、こう結んでいる。


自然災害への対応などは財政が機動的に対応すべき分野だ。真に必要なお金をきちんと出せるように、消費増税対策に名を借りたバラマキは慎むべきだ。”(1)


デフレへ対応は金融緩和と機動的な財政支出で対応すべきで、それを何十年も放置してきた批判は無いのだろうか。それとも、「財政が機動的に対応すべき分野」は日経が決める、ということなのだろうか。


社会保障を人質にした消費増税、財政危機を煽っての消費増税は慎むべきではないだろうか。

再分配の面がある社会保障の財源として、逆進性のある消費税と社会保険料の制度で対応することはジョークにもならない。

また、財政危機がフェイク・ニュースであることは、リフレ派のみならず、IMFも言い出しており、財政危機を言い訳にした緊縮策の推進は「詐欺的行為」と言われてもしかたないだろう。


消費税率の更なる引き上げへ向け、駆け込み需要の反動減対策や教育負担の軽減だけでは対応不可能だと思われる。

何故なら、消費税率の引き上げは、一時的な影響ではなく、恒久的に実質所得を減少させる。また、多くの国民に負担を強いる消費税であるが、その対策として取られる財政支出は、教育負担が軽減される世帯など一部には若干の効果があるかもしれない。しかしながら、今年で子育てが終わる家庭との不公平感を増す。将来世代にも高い消費税税率による重税負担を強いる。


消費増税の影響については、田中秀臣氏(*6)、安達誠司氏(*7)の各論考を参照願いたい。


官邸のHP(*8)には書かれていないが、以下の記事(*9)に菅官房長官のコメントがある。


菅官房長官は「リーマンショックのような事態が起きなければ、来年10月に消費税率を引き上げると何回となく表明している」としたうえで、「最終的な決断はいつか」という記者団の質問に対し、「そこは状況を見ながら判断されるのだろうと思う」と述べました。”(*9)


消費増税を改めて延期する可能性も残されている。

過去2度の増税延期(*10)がなされた。

記事(*10)には「負担が特定の層に偏らず、社会保障費の財源にふさわしいとされる。」という、世界の多くでは社会保険料と所得税などでまかなわれる社会保障が一般的であるが、財務省に忖度してか、残念な内容が書かれているので注意が必要だ。



高橋洋一氏によれば増税スキップの最終決断は2019年でも間に合うそうだ。


実務を考えると、来年春に増税スキップを打ち出せば、消費増税スキップはギリギリ間に合うだろう。そうした公約で参院選に突入すればいい、と筆者は考えている。”(*11)


もっとも、増税スキップだけでは、長い期間のデフレ不況、弱い再分配機能で痛んだ家計が安心して消費を拡大することにはならないかもしれない。増税という「将来不安」を一日も早く払拭することが日本経済にプラスになるだろう。


岩田規久男前日銀副総裁は次のように指摘する。

重い税・社会保障負担のために、実質可処分所得が増えない現役世代は、保育、教育、住宅ローンなどのための重い負担に加えて、退職後の生活費のために節約に励まざるをえない。そのため、「アマゾン効果」などによって増えた実質所得は消費に向かわず、貯蓄に回される

[中略]

現役世代の税・社会保障負担を増やすことなく、彼らの実質可処分所得を増やさなければならない”(*12)


増税先行の「税と社会保障の一体改革」は、大きく見直されるべき。


安倍総理は経済最優先と言い、デフレ脱却と名目GDP600兆円を掲げた。憲法改正も掲げているが目標はいずれも未達である。

何をなすべきか、よくよくお考えいただきたい。


総理大臣といえど、独裁者のように自由に政策決定できる訳ではないエピソードがある。


20141130日の新報道2001で、安倍総理が財務省による増税根回しについて言及した。


安倍総理「同時に現実論としてですね、そうやって(消費税率を10%に引き上げるという)方向性が決まって、どーっと進んでいます。財務省の皆さんも善意でやってるんですよ。やっぱり財政を再建しなければいけない。善意ではあるんですが、凄い勢いで根回しをしてますから、党内全体はその雰囲気になっていてですね、この大きな船を方向転換するというのはそう簡単なことではありません。しかし、そこで責任を持っているのは私ですから、方向転換をする以上、みんなでその方向に向かっていく、という意味においては解散総選挙という手法で党内一体で」


消費増税ストップ、デフレ脱却などを後押しする声をあげることを今後もしていきたい。



(*1)消費増税、反動減対策の歳出は厳選せよ: 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO36520030V11C18A0EA1000/


(*2)コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論 | Reuters

https://jp.reuters.com/article/imf-g20-breakingviews-idJPKCN1ML0NF


(*3)IMF最新レポートが教えてくれる、「日本の財政危機」というフェイク・ニュース【田中秀臣】

https://news-vision.jp/intro/189251/


(*4)IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978


(*5)平成30年度補正予算 : 財務省

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/hosei1015.html


(*6)消費税率10%、安倍首相の決断で甦る「失われた3年」 

https://ironna.jp/article/10936


(*7)来年の「消費税率引き上げ」は、家計にこんなふうに影響する

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57693


(*8)平成301015日(月)午後 | 平成30 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201810/15_p.html


(*9)消費増税 官房長官「思い切った反動減対策を」 | NHKニュース  

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181015/k10011672241000.html


(*10)消費税の増税とは 10%への引き上げ、2度延期: 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO36476330U8A011C1NN1000/


(*11)総裁選後に待ち受ける安倍首相「過去最大級の難問」が見えた

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57650


(*12)VOICE(ヴォイス) 2018 10 月号

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