日銀審議委員の片岡剛士さんのスピーチが公開されました。


(*1)【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策

神奈川県金融経済懇談会における挨拶要旨

(日本銀行政策委員会審議委員 片岡 剛士

2018年9月6日)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180906a.htm/


僕が注目したポイントについて、抜き出します。ポイントは3点


1.日本銀行のコミットメントが弱くなっていることに言及

2.物価上昇の勢い(モメンタム)をインフレ率2%の到達確率として定量的に表現

3.追加緩和の必要性を主張



世界経済の概況に触れられ、米国金融引締めや貿易摩擦によるリスクに言及されています。


そして、日本経済について。


“さて、将来の成長率を見通すにあたり重要となる国内経済イベントの1つが、19年10月に予定されている消費税率の引き上げです。次回の消費税率引き上げは、前回の14年時と比べ引き上げ幅が小幅で、かつ軽減税率が導入される予定であることもあり、家計の直接的な負担に限れば影響は小さいと言えるのかもしれません。しかし、図表5左図のとおり、家計消費は、前回の消費税率引き上げから4年が経過した現段階で、ようやく引き上げ1年前の13年4月時点の水準まで回復した状況です。また、図表5右図に示した消費活動指数の形態別実質消費の推移をみると、耐久財やサービス消費は振れを伴いながら増加しているものの、飲食料品や衣料品などを含む非耐久財消費は低迷が続いており、家計消費には依然として脆弱性が残っていると私自身はみています。こうした状況が続く中では、税率引き上げの影響を過小評価することはできません。加えて、20年度にかけて、オリンピック需要の剥落等から国内設備投資の拡大基調が一服する可能性があるほか、先に述べた海外経済を巡るリスクシナリオが顕在化する可能性も相応にあるため、19年度以降の経済成長率は、下振れの可能性が大きいと考えています。”(*1)



図表出典(*1)


図表5の左図を見ると、8%への消費税率引き上げの負の影響が大きく、また長い期間に及んでいると思われます。


次に物価です。


“物価情勢を判断するにあたっては、振れの大きい一部品目を除いた基調的な変動を把握することが重要です。図表6右図では、消費者物価の基調的な変動を表す様々な指標を示していますが、今年3月以降いずれも低下基調にあり、私は、物価の基調的な上昇力が弱まっているとみています。”(*1)


物価安定のモメンタム(勢い)、元気が無いようです。

次に物価に影響を及ぼす指標としてマクロ需給ギャップと予想インフレ率を挙げられます。予想インフレ率に関するコメント。


“予想インフレ率は、弱めの動きが続いているとみています。これには、過去、長期にわたってデフレが続いたことや、足もとの物価の動きが弱いことがバックワード要因として作用していると考えられます。これに加え、私は、本行が掲げる2%の「物価安定の目標」に対するコミットメントが弱まってしまっていることも影響していると考えています。”(*1)


物価見通しの引下げ、物価目標達成時期の後ズレを何度も繰り返しており、「できるだけ早期に」物価目標を達成すると言いながら、行動が伴っていません。

「100㎏の体重から、できるだけ早期に20㎏やせます!」と言いながら、5年たっても7㎏しかヤセておらず、ラーメン二郎で麺大盛り肉野菜ニンニクマシマシを三食食べて「Amazonのせいでヤセない」と言っている人を見たらどうでしょうか。


「ヤセる気あるの?」

(ダイエットへのコミットメントの信認の毀損)

と、思うのが普通ではないでしょうか。



次に金融政策について。


“以上ご説明した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」に対して、私は、物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、金融緩和自体を強化することが望ましく、長期金利操作の弾力化は「ゼロ%程度」の誘導目標を不明確にするとして反対しました。これに関連して、次の3つの論点を挙げたいと思います。”(*1)


片岡剛士さんのご主張のポイント、とっても鋭くて重要です。


“1点目は、政策委員の物価見通しが引き下げられる中で行うべき政策は、追加緩和であり金融緩和継続のための枠組み強化ではないと考えることです。”(*1)


激しく同意です。その判断の根拠として図表を示されています。



図表出典(*1)



“2点目は、長期金利がある程度上下に変動することを許容する政策変更を、物価見通しが引き下げられる現時点で行う必要がないと考えることです。”(*1)


激しく同意です。


“3点目は、先行きの政策変更に関するコミットメントやフォワードガイダンスでは、足元のインフレ率と2%の目標に相応の距離がある現状を考慮に入れると、物価に対する金融政策の働きかけを明確にし、目標達成に向けた強い意志を示すことが重要であると考えることです。”(*1)


そうですね。更に片岡さんの直球がきます。


“今回導入されたフォワードガイダンスの「当分の間、きわめて低い長短金利の水準を維持する」という記述は、政策委員の物価見通しや、足もとの物価上昇率と2%の目標に相応の距離がある現状からの合理的帰結と言え、これに現状追認以上の効果があるのか判然としません。むしろ、フォワードガイダンスは、物価に対する働きかけを強化する観点から、物価上昇率、あるいは予想インフレ率や需給ギャップとの関係が明確となる形で設計すべきであると考えています。”(*1)


御意ですね。

現在の日銀のフォワードガイダンスでは、

「当分の間、ヤセるって言い続けるんだから二郎大盛り食べてても文句言わないでね(ハート)」

と「完全に一致」というヤツです。


シメときますか。


「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという政府との「共同声明」でも謳われた日本銀行のミッションに鑑みると、物価が伸び悩み、不確実性の拡大が懸念される中では、金融緩和を息長く続けるための枠組みの強化ではなく、逆に息長くならないように金融緩和自体を強化して、経済や物価への働きかけを強めることが重要です。具体的には、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げることで、需給ギャップの拡大ペースを高めて、賃金や価格設定に対する家計・企業の行動変化をさらに強く後押しする施策が必要であると考えています。コミットメントについては、予想インフレ率そのものの拡大を促すべく、「予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には、追加緩和手段を講じる」と約束することで、予想インフレ率の低迷を許容しない姿勢を明確にすることが必要である、と現時点では考えています。”(*1)


デフレ脱却に一番真剣な言動を示すかたこそ、日銀総裁であって欲しいものです。

現状であれば、それは片岡剛士さん以外に居ないと僕は思います。



若田部昌澄さんが「勇気の人」とエールをおくられた片岡剛士さん(^-^) / “【記事紹介】安倍総理は日銀審議委員候補の片岡剛士さんの意見を傾聴すべき(若田部昌澄さん)|質問者2 のブログ” htn.to/fXwCyK



「さっさとデフレを終わらせろ」ですね(^-^)