(文字修飾、括弧書きは質問者2によります)


○渡辺喜美君 本日は、日本銀行の年二回の株主総会でございます。九〇年代の終わりに改正をされました日銀法において、この株主総会での説明責任というのは非常に大事なことになっております。ということで、本日は黒田総裁にはかなり耳の痛い話をさせていただきますので、お許しをいただきたいと思います。

 まず、お手元に配りましたこの縦長の紙を見ていただきますと、ありますか、これは私が日銀に発注をして作ってもらったマネタリーベースの前年比、伸び率ですね。太い方の線がマネタリーベースの前年比であります。細い方の線が、これは日銀保有の長期国債が前年差、どれだけ増えたか減ったかと、こういうグラフであります。

 黒田総裁が就任されたのが一三年の三月ぐらいでしたですかね。実は、あのとき投票を二回やりまして、私は一回目は反対をしております。二回目は、一か月足らずの間に異次元緩和をされましたので、賛成投票をいたしました。その頃は非常にいい勢いでこのマネタリーベース、長期保有国債を増やしていったんですね。ところが、安心しちゃったのか、この二〇一四年四月の消費税率の引上げ、この頃には低下傾向にもう既に入っていたというわけであります。

 次に、その年の十一月、安倍総理が消費税率の引上げ延期を発表いたします。その直前に、黒田バズーカ第二弾、量的・質的金融緩和の拡大というのをやるんですね。安倍総理が景気悪化を相当心配をして延期を発表した、そこからこの長期国債の残高も増えていくんですよ。伸び率については、マネタリーベースについてはもうずっと一貫して低下傾向であります。

 そして、二〇一六年六月、再び安倍総理が参議院選の直前に税率の引上げ時期の変更、再延期というのを発表をされます。そして、選挙が終わって九月にYCCが始まると、こういう話でございまして、私から見ていると、黒田総裁、相当増税のために金融政策で支援をしておられるなという感じがしてならないんですが、いかがでしょうか。


○参考人(黒田東彦君) 私どもの金融政策は、年に八回、金融政策決定会合で議論をしておりますけれども、その際には、当然、様々な海外あるいは国内の経済状況、金融資本市場の状況等を踏まえて、次回の金融政策決定会合までの金融政策、調節方針を決定するということであります。

 その際には、当然、政府が決め、国会で法律が成立した予算あるいは税制の状況も踏まえて金融政策を決定しているということでありますが、特に何かその消費増税をサポートするために金融政策を行っているということではございません。



○渡辺喜美君 当然、日本銀行総裁としてはそういうお答えになろうかと思います。

 ただ、相当、黒田総裁のパラダイムが日本銀行の説明責任を苦しくしているということは指摘をいたします。消費税の増税は軽微だとまず言っちゃったんですね。一四年の増税の前後だった、前だったかな、ちょっと忘れましたけれども。その後、増税延期、再延期とあって、私が聞いたうわさ話ですが、黒田総裁が、お酒の席だとは思いますが、後輩たちに、何でおまえらは増税やらないんだと、これが本当の黒田節というやつでしてね。恐らくそういう、増税を何とか正当化しないといけないというパラダイムが今回の説明責任の放棄につながっているんではないんでしょうか。国会に対する説明責任というのは、日銀の、新日銀法において責任の取り方として一番大事なことなんですよ。ところが、物価目標を六回延期した、今回は先ほど来話があるように削除しちゃった、これは説明責任の放棄以外の何物でもありません

 結局、来年の十月ですか、増税の予定が。ですから、そういうことも見越して、時期はもう今回削除をしちゃおうと。増税やれば、先ほどの中山先生の話に出てきたこの家計負担は二兆二千億円にとどまるといったって、この後段の日銀の説明の方が正しいんですよ。消費増税のインパクトというのはそのときの経済状況によって大きく異なる。早い話が、新興国の問題もあるし、イタリアの新政権の話もありますから、これから世界経済どう動いていくか分からない。ですから、そういう逃げを打っておられるんだと思いますが、この重大な日銀法違反、どうお考えになりますか。


○参考人(黒田東彦君) これまで展望レポートでは、消費者物価の前年比が二%程度に達する時期の見通しを記述してきたわけですけれども、先ほど来申し上げているとおり、市場の一部ではこうした見通しを二%の達成期限と捉えまして、それが変化すれば当然政策が変更に結び付くといった見方が根強く残っておりました。そうしたことから、このような時期に関する記述が達成期限ではなくて見通しであるということを明確にするという観点から、言わば市場とのコミュニケーションをより円滑に行うというために記述の仕方を見直すことにしたわけでございます。

 ただ、先ほど来申し上げているとおり、経済、物価の見通しは示しておりまして、また、その上下のリスクについても各政策委員の評価を従来どおり示しているということでございます。


○渡辺喜美君 削除しちゃうんだったら、インフレ期待に働きかけるコミットメントはもっと目新しいもの、強化をしていかなきゃいけないんですよ。でも、先ほどからのこの議論聞いていて、目新しいものが何もないんですね。

 総裁が、記者会見でしょうか、実質金利と自然利子率が大事だというようなお話をされました。一方、NAIRU、インフレを加速しない失業率のことでありますが、ノン・アクセラレーティング・レート・オブ・アンエンプロイメント、このインフレを加速しない失業率については一体何%だとお考えですか。また、自然利子率、それから実質金利は今現在どれくらいだとお考えでしょうか。


○参考人(黒田東彦君) このNAIRUにつきましては、もちろん直接観察することができないわけで、様々な方法による推計が必要になってまいりまして、学者の方々の推計等もありますけれども、結果が大きく違っておりまして、日本銀行では現在、このNAIRUというもの自体は特に活用してはおりません。

 ただ、その代わりにといってはなんですけれども、失業率、労働力化率、あるいは資本の稼働率といった労働、資本の稼働状況に関する様々な経済指標を基にマクロ的な需給ギャップを計算して、これも公表しておりますし、そういった経済指標自体も一般に公表されているわけであります。そうしたことを踏まえて、各種の賃金・物価指標を総合的にきめ細かく点検をいたしておりまして、経済全体の稼働状況や賃金、物価の上昇圧力を見る上ではこういったアプローチが適切なものではないかというふうに考えております。

 なお、御指摘の実質金利と自然利子率につきましては、我が国の名目金利を見ますと、現在のイールドカーブコントロールの下で短期ではマイナス、十年物金利ではゼロ%程度で推移しているわけでありまして、他方、予想物価上昇率は、指標によって程度の差はありますけれども、いずれもプラス圏で推移しているということで、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利はマイナス金利内で推移しているというふうに見ております。

 なお、景気や物価に対して中立的な金利である自然利子率というものも、二〇一六年九月の総括的検証でお示ししたように、いろんな試算があってなかなか一つに割り切れないんですが、一応幅を持って見たところでも、自然利子率はおおむねゼロ%近郊にあるというふうに見ていますので、実質金利がかなりマイナスになっているということから、経済に対する刺激効果は十分確保されているというふうに見ております。


○渡辺喜美君 いずれにしても、NAIRU、自然利子率、それからイールドカーブコントロール、これらは完全雇用ということについて統一的に説明をされなきゃいけないと。達成時期を削除したんだったら新しいコミットメントをはっきりと説明をすべきことを申し上げて、終わります。



(議事録からの引用終わり)


コミットメントを強化するどころか、黒田節…

現状維持という期待に働きかけKuroda-san はまだまだ続きそうですね(@_@)