自民党若手が消費増税凍結を提案するそうです。


報道(*1)では

”自民党の衆参若手議員でつくる「日本の未来を考える勉強会」(呼びかけ人代表・安藤裕衆院議員)が1日、平成31年10月に予定している消費税率10%への引き上げ凍結や20兆円超の景気対策を求める提言書をまとめた。今月中旬以降、安倍晋三首相と二階俊博幹事長に提出する“(*1) そうです。


消費増税凍結、消費減税は望むところ。多くの国会議員にマクロ経済の正しい知識が広がり、緊縮策から脱することを期待します。

何せ、財政政策を実行するには国会で法案を通す必要があります。東日本大震災の後、211人の国会議員が増税によらない復興財源の確保に賛成していましたが、結果は復興増税…



安藤議員のHPに興味深い提言(*2)がありましたので、コメントします。


10%への消費増税を凍結することはもちろんのこと、5%への減税も視野 に入れた、消費税のあり方についての徹底的な議論が必要不可欠である。”(*2, 3ページ)


激しく同意です。

色々と気になる点も


“(3)「PB改善」が、デフレを導き、持続させている”(*2, 2ページ)


これは事実ですか?

この20年でPB1番改善した平成18(2006)年度頃(*3)は、弱いとはいえ消費者物価指数は上昇傾向(*4)でした。


日銀の引締め的な金融政策、そこに消費増税という財政緊縮が追い打ちをかけた、と理解してます。

図表出典:(*3)

図表出典:(*4)


“デフレの今、経済成長を導くためには財政出動が必要不可欠である”(*3, 3ページ)


本当?

第二次安倍政権以降では、2013年度こそ拡張財政でしたが、それ以降は緊縮的な財政政策ですが、拡張的な金融緩和の効果もあってか、経済成長しています。



”財源は「税収」以外にも「国債」が存在することは論を待たない“(*2, 4ページ)


ですね。税外収入(通貨発行益や政府資産売却益など)が存在することも論を待たないと思いますが、これを除外するのは何故なのか。



“国債を財源と見なすということはつまり、将来の「成長」を「財源」と見なすということである。 こうした態度は「デフレ状況下」では、許容される。”(*2,4ページ)


デフレ状況下でなくとも、建設国債など財源になり得ます。なぜデフレ状況下縛り



600兆円経済を実現するために求められている、3-4%の名目成長率と歩調を合わせて、 「当初予算」を 3-4%ずつ、つまり、毎年 2~3 兆円ずつの拡張を「上限」とする、というフロー目 標を掲げることが得策である”(*2, 4ページ)


金融政策への考慮が抜け落ちている気がします。


完全雇用を目指し、金融財政の政策を行うことが必要と思われます。

第二次安倍政権発足前の2012.10-12月、約493兆円の名目GDP2017.10-12月、約550兆円と57兆円増加。この増加時の経済政策は、拡張的金融政策+(13年度のみ拡張で後は増税含む)緊縮財政です。

野口旭さん、田中秀臣さんの共著『構造改革論の誤解』(*8, 166ページ)によれば、 1992/898/11 120.52兆円の財出も40兆円弱の名目GDP増に留まり、デフレ脱却もままなりませんでした。


『平成大停滞と昭和恐慌』(*5)からいくつか引用します。


90年半ばまでの実際のマネタリーベースの伸び率は、ほぼマッカラム・ルールによる最適供給量の伸び率と一致していたが、90年後半以降は、ほぼ一貫して最適供給量の伸び率を下回っている”(*5)


”インフレターゲットをめぐる論争は、すでに70年前に戦わされてきた論争のくりかえし[中略]結末は[中略]金輸出再禁止と[中略]日銀による国債引き受けという二段階のリフレ政策の実施によってデフレからの脱出が達成され、小数派であったリフレ派の勝利に終った“(*5)


昔からなんですね(^-^)


”クズネックによる大恐慌当時の米国の公共投資額の推計をみても、デフレ圧力が急激に縮小していった1933年には公共投資はむしろ減少しており、34年の増加もその前後のレベルと比較すると、それほど積極的とはいえない“(*5)


“当時のGDP統計をみても、1933年の実質GDP成長率に占める政府関連支出の寄与度は、マイナス0.62%とマイナス寄与であった[中略]デフレ脱出は、デフレ・ギャップの縮小よりも、デフレ予想の転換がより重要”(*5)


“デフレ脱却時の主要マクロ統計の中で金融機関貸出の回復がいちばん最後であったという事実を考え合わせると、不良債権処理を終わらせ、銀行機能を活性化させることは、かならずしもデフレ不況からの脱却の必要条件ではないことがうかがえる”(*5)


こういった分析があることを共有しておきます。



(*1)自民若手が消費税増税凍結の提言書「再デフレに直面」 安倍晋三首相らに提出へ

https://www.sankei.com/politics/news/180501/plt1805010016-n1.html



(*2)『デフレ不況から完全に脱却し、日本経済を成長路線に乗せると同時に、財政再建を果たすために必要な財政政策に関する提言(概要)』

https://www.andouhiroshi.jp/wp/wp-content/uploads/2016/07/63e9d0abdb1ea2db6a9b298e9206988b.pdf

(*3)参議院資料

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h27pdf/201513704.pdf


(*4)消費者物価指数

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nendo/pdf/zen-nd.pdf#page=4

(*5)『平成大停滞と昭和恐慌

http://amzn.to/1RrNmBL