日本ABC協会が2017年末に発表した11月の新聞販売部数によると、日本経済新聞の部数が前月に比べ一気に23万8千部(全体の約1割)も減ったそうです(*1)。

日経新聞社が11月1日に実施した23年ぶりの新聞購読料値上げ(*2)が原因との声もあるそうです。


“日本経済新聞社は11月1日から日本経済新聞の月ぎめ購読料を朝夕刊セットで現在の4509円から4900円(消費税込み)に、全日版を3670円から4000円(同)に改定させていただきます”(*2)


需要の価格弾力性の場合は、需要の変化率/価格の変化率の絶対値で表されます。

10 ÷10.9 ≒ 0.9


スティグリッツの入門経済学の米国の例では

電気やガスは0.9程度、食料品は0.6弱、書籍・新聞は0.3強だった記憶です。


新聞も下手をすると「贅沢品」や「代替品」(インターネットなど)のあるもの扱いされ、弾力性が更に高まる可能性がありそうです。


消費税率引き上げを喧伝していた大手新聞などは「増税によって社会保障の持続性が高まり安心して消費が増える」という主旨の記事が書かれていた記憶があります。

そこには可処分所得減少に伴う消費減少は考慮されていないかのようです。


日本新聞協会のサイト(*3)によると消費増税に多くの新聞が賛成しておきながら、新聞への軽減税率を求める理由を述べています。


“消費税は、誰にでも同じ税率が適用されるため、低所得者の負担が大きくなる”(*3)

“ニュースや知識を得るための負担を減らすためだ。新聞界は購読料金に対して軽減税率を求めている。読者の負担を軽くすることは、活字文化の維持、普及にとって不可欠だと考えている”(*3)


生活者は、新聞だけで生活できる訳ではありませんので、仮に新聞の消費税率が「据え置き」(既に8%に引き上げられた税率は軽減されず据え置かれるだけです)されたとしても、他の商品やサービスの税率が上がれば、可処分所得が減少してしまい、新聞に割くことができるお金が減ってしまい、新聞購読をやめてしまう可能性があります。


想像力の欠如でしょうか。。。



可処分所得ということであれば、デフレにも触れない訳にはいきません。

旧日銀は1990年代より引き締め的な金融政策を継続し、世界でも最も恥ずかしいデフレ維持20年で、名目GDPや可処分所得・職や人命を失いました。

デフレ下では、物価下落を上回るペースで可処分所得が減少するデータが日本において示されていたはずです。


日本の経済紙では、リフレ派の「渡辺喜美、岩田規久男を(紙面に)出すな!」という新聞もあったそうです。(海外の有名大学の教授のご講演で伺ったお話です)


そのうえ、日銀の引締め気味な金融政策を擁護するかのような記事を沢山掲載していた認識です。(デフレの原因は中国だとか人口減少とか色々とトンデモがありましたね)


仮にも日本を代表する新聞が、デフレ維持に加担し、国民の可処分所得減少を間接的に支援していたとしたら…

新聞価格値上げで部数を大きく減らしても、自業自得と言える部分もあろうかと。



新聞全体で見ると、2007年の約5,200万部から約4,200万部と、この10年で約1,000万部(!)減っていることになります。(世帯数は約450万増)


インターネットの普及、デフレや増税・社会保険料増などによる可処分所得の減少などの理由が思い浮かびます。


AIなどにより、英語を日本に翻訳する機能が充実すれば、海外メディアの記事を翻訳したものを読んだ方が、マクロ経済については良質な情報を得ることができるかもしれませんね。


FT(日経)のマーティン・ウルフ氏の記事は、官庁などからのペーパーを加工したものではなく、データや経済学の知見や演繹的な思考に基づいた記事で参考になります。


日本の経済紙にも期待をしたいところです。



(*1)日経が「1カ月で24万部減」の衝撃 ( FACTA , 2018.

https://facta.co.jp/article/201802035.html


(*2)日本経済新聞 購読料改定のお願い (2017.10.08)

https://www.nikkei.com/topic/kaitei.html


(*3)なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?

http://www.pressnet.or.jp/keigen/qa/


(*4) 新聞の発行部数と世帯数の推移 ( 日本新聞協会 , 2017年10月)

http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php