2017年の4-6月期のGDP成長率が思いのほか(?)良かった(?)せいか、補正予算編成への動きが鈍いようです。
引用している日経の記事でも「好景気でも歳出拡大!?」という見出しを掲げ、その背景を「財政に依存せずには政権が衆院解散戦略を描けなくなっていることがある」と書かれています。

読み解きポリティクス 好景気でも歳出拡大!?
政府・与党に大型補正論 来年解散にらみ、成果求め焦り

「好景気」なのでしょうか?
消費税率を引き上げる法案の附則18条(削除されてしまいましたが)には、次の通り書かれていました。
"‪消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済 の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる"‬
‪出典:附則18条(景気条項)は増税派への時限爆弾
‪平成23〜28年度の平均は、名目1.2、実質1.0程度です。政府の見通し通り平成29年度が名目2.5、実質1.5となったとしても、平均は名目1.4、実質1.1程度で、目標を達成するには名目6.7、実質4.2程度を平成30〜32年度平均で続ける必要があります。‬

‪消費増税はやってしまいながら、増税法案の附則に書かれた景気条項(経済成長の目標)は削除し、目標としていた経済成長率についてはメディアなどでほとんど報道されません。‬

1990年前半から約四半世紀の間「名目GDPゼロ成長ターゲット」政策でもしてきたかのような、日本のマクロ経済政策(財務省、日銀の影響は大きいと思います)。
日本の名目GDPは約1倍…米国は約3倍なのに、です。新卒で入った新入社員が25年後も同じお給料だったら、悲しいですよね。。。
これだけ長期間に渡り、デフレ&低成長を続ける緊縮的な金融財政政策がとられた先進国を私は日本以外に知りません。
大恐慌や昭和恐慌に比べると、緩やかなデフレかもしれませんが、約四半世紀という長期間(名目3%成長を25年も続ければGDPは約2倍強)を「失わせた」のです。
たかだか四半期の成長率が高かったからといって、四半世紀もデフレ&低成長だったのですから、名目GDPを米国などと水準で比べると大きく見劣りしたままです。

政府には、日銀との物価安定目標をアコードに格上げして、コミットメントを強化し、名目GDP600兆円、デフレ脱却を確実にする経済政策の実施を期待します。

平成25年度を除くと第二次安倍政権の財政は緊縮気味との指摘もあります。
先ずは補正予算の編成をしっかりと行って欲しいものです。財政に関しては、次の記事が参考になります。

財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由 | 高橋洋一の俗論を撃つ! | ダイヤモンド・オンライン 

日本は財政危機だから、財政支出余地が余りない、と思われている方が多い(財政クライエンテリズムの罠に落ちた学者やメディアなどの影響が大きいと思います)が、日本の財政はそれほど悪くありません。
‪Japan's Fiscal Situation Is Not As Bad As Many Assume via @forbes

国債問題を考えるうえで、基礎的、かつ、重要な観点からの評価が広く知られていないのです。
学部生レベルと思われる以下の国債問題を考慮する際に大事な二点
1)総額と純額を区別する
2)統合政府で考える
これらを経済学者の方やエコノミスト、経済の「専門紙」の記者さん等がご存知ない訳はない、と思います。

知っていて、報じないのは悪質ですが、知らないで記事を書いたり発言しているなら勉強不足ですね。
以下の書籍「はしがき」より
"「マクロ経済学を学ぶ目的の1つは、ジャーナリストや評論家や政治家にだまされないようにするためである」"

第9章 日本経済とマクロ経済学
"(4)経済変数の総額( gross value )と純額( net value )を区別する。特に,国債の問題を考察するときに,この区別は重要である。
(5)通常日本政府が公表する経済統計では,中央銀行である日本銀行(日銀)は,政府部門からは除外されており,民間銀行と同じ「金融機関」に含められているが,特に国債の問題を考察する場合,中央銀行を政府部門の一員とみなした統合政府(consolidated government)勘定の観点から考察することが重要である" (220ページ)
≪【本】マクロ経済学基礎講義 <第3版>≫

経済の素人ではありますが、簡単なスライドを作って、日本の財政状況はそれほど悪くなく、財政や金融を引き締めていることが良くないことを知人などに伝えています。
ご笑覧下さると嬉しいです。

‪#本当の財政危機の話をしよう‬