「こども保険」が最近話題になっています(*1)。

子育てする家計を応援するという点は良いのですが、色々と思うところがあります。

ポイントは次の3点。
1.期待効果よりも制約条件(特に財源)にフォーカス
2.既存制度の問題を改善せずに別の仕組みを作る官僚臭さ
3.増税へつながる仕組みを増やす危険

小泉進次郎氏らの「こども保険」をアホという足立康史氏(*7)が私案としながらも、行財政改革で財源が足りなければ「こども税」を主張(*8 動画の6分40秒過ぎ頃)し、教育国債を論外と。

教育の大切さを噛みしめる出来事でした。
大人になってからも、勉強は必要ですし、とっても大切ですね。

ドクターZによれば
"基礎研究や教育のように、成果が出るまでの時間が長く、大規模で広範囲に行う必要のある投資は、公的部門が主導するべきで、その場合財源は、税金ではなく国債で賄うことが適切であることがわかっているからだ。


教育が将来の所得を増やすことを示す実証分析結果は多くある。たとえば、高等教育を実施すれば、所得増、失業減が見込まれ、かけた費用に対する便益が2倍以上になるとの試算がある

[中略]

元大蔵事務次官の小村武氏の著書で「財務省のバイブル」といわれている『予算と財政法』には、「投資の対象が、通常のインフラストラクチャーのような有形固定資産であれば国債で賄うのは当然のこととし、研究開発費を例として、基礎研究や教育のような無形固定資産の場合も、建設国債の対象経費としうる」と書かれている。教育国債は本来であれば、財務省「お墨付き」の考え方なのだ"


"内閣府は24日、自民党の特命委員会で、0~5歳の幼児教育と保育の完全無償化に約1.2兆円の公費が必要だとする試算を示した"(*1)

1兆円ちょっとのお金すら出さずに、天下り法人など「シロアリ」(野田佳彦氏の言葉)へお金を使っているノダ。

教育の効果から考えて、やると決めて始めて、予算の組み替えや「教育国債」という制度が出来るまでに時間がかかるのであれば、赤字国債を出してでも、今すぐ始めるべき。もう、何年も遅れているのだから。

既存制度、例えば、社会保険料は公平性において、問題があります。
厚生年金保険料の不払い(国税では280万法人、年金機構では200万法人把握と、約80万法人のズレがあり、この約80万法人の保険料不払いは5〜10兆円程度との試算もある。
この不払いを是正する方法として歳入庁の必要性が言われて久しいが、歳入庁創設に向けた動きは、ほとんど聞こえてこない。
もう一つは、社会保険料の逆進性の問題。これも手付かずです。逆進性ある消費増税で年金財源をというシャレにならないことをやっているので、お話になりません。

年金は、保険料が足りないなどの理由で、税が投入されることになりました。歳入庁の創設や、景気を良くして就業者数を増やしたり、所得を増やすことへの適切なマクロ経済政策も充分に行わずに、です。
そして、社会保障の持続性を高めるため、というお題目の下に、消費増税がなされました。
保険と言った方が、取りやすいからですかね。

震災復興で増税→実現!
社会保障で増税→実現!(2%は先送り)
財政危機で増税→停滞中?!

与党も野党も、財源がからむと急にセンス悪くなるのは、アベノセイダーですか?
私は別の団体の影響が大きいと思いますよ。


以降は、ご参考です。

OECDの資料(*6)を見ると、日本の教育への公的支出の残念さが良く分かります。

"日本は、就学前教育の在学率が高いにもかかわらず、その教育支出(公財政支出・私費負担)の 対 GDP 比は 0.2%で、OECD 平均の 0.6%を下回っている。この結果、児童 1 人当たりの公財政支 出・私費負担合計も OECD 平均より少ない(OECD 平均の 8,008 米ドルに対し、日本は 5,872 米 ドル1 )。さらに、他の OECD 加盟国の場合とは異なり、就学前教育支出の大半は私費負担であ る。就学前教育支出に占める公財政支出の割合は 44%である-これはデータのある OECD 加盟国 の中で最も低く、OECD 平均の 80%を大幅に下回っている。また、他の OECD 加盟国とは対照的 に、日本では就学前教育を受ける児童の大半が独立私立教育機関に在学している。2013 年の就 学前教育児童の私立機関在学率は 72%(OECD 平均は 15%)、国公立機関在学率は 28%(OECD 平均は 61%)だった"(*6)

こども保険に対する問題を指摘されている記事からいくつか引用しておきます。
こども保険に肯定的な意見(*2)(*3)のリンクを貼っては起きます。財政審のメンバーである土居丈朗氏が何を言っているか、こども保険に対して好意的かどうかを見ると、某団体の思惑が透けて見えます。(個人の感想です)


"一つの大きな問題は、年金保険料を納めている、おおよそ20歳から60歳の世代に負担が集中することだ。特に、若い世代は、受益側に回る可能性が大きいとはいっても、給与所得がなかなか伸びない中で、彼らに一律の負担を求めるのは気の毒だ


「高齢者に偏りがちな社会保険に子ども向けの保険を加えてバランスを取る狙いもある」(『朝日新聞DIGITAL』3月30日)との説明記事もあったが、支出対象が子どもであっても、その親世代から一律にお金を取るのでは、バランスは取れない"(*5)


"経済学から見れば、教育国債のほうが無償化の「王道」といえる。生産力を上げた未来世代に返済を担ってもらうのは、効率のいい未来への投資だ"(*4)



(*1)『幼児教育・保育の無償化、公費1.2兆円必要 内閣府試算』
(日本経済新聞,2017.04.27)

(*2)『こども保険へのご意見やよくある質問への回答をつくりました』
(小林史明議員,2017.04.07)

(*3)『「こども保険」と「教育国債」は、何が違うのか どちらを優先し、どう費用を負担するのか』
(土居丈朗氏, 東洋経済オンライン, 2017.04.04)

(*4)『「こども保険」の背後にちらつく財務省の魂胆〜まずこれを手始めに…』
(高橋洋一氏,2017.04.16)

(*5)『小泉進次郎氏らが提案する「こども保険」に気乗りしない理由』
(山崎元氏,2017.04.08)

(*6)『図表で見る教育 2015年版』(OECD)

(*7)『あの足立康史氏が小泉進次郎氏に「はっきり言ってアホ」 「こども保険」を一刀両断』

(*8)『国会4/28 足立康史 進次郎案のこども保険、アホやな』