若田部昌澄さんの記事です。

Thanks To Trump, Bank Of Japan's Kuroda Could Be The Luckiest Central Banker In The World via @forbes 
(Masazumi Wakatabe,2016.11.28)


トランプ氏が次期米国大統領に決まってから、ドル高米国債金利の上昇をもたらしていることで、黒田日銀総裁は世界一ラッキーな中銀総裁になり得る、というお話のようです。

日本の消費者物価指数(対前年比)は、コアCPIが▲0.4%、コアコアCPIが+0.2%と、弱く、GDPデフレーター(対前年同期比)で11四半期ぶりにマイナスになり、雇用指標は回復基調が続くものの、デフレに戻る危機が迫っていると分析されています。

そこへ、トランプ氏の経済政策への期待から金利が上昇、ドル高円安方向へ動きだしたと。

前回の記事で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和が、融通がきき、国債金利が上昇すると受動的に金融緩和がなされる、と若田部さんは言及されていました。
日銀は日本政府債務である日本国債金利が上昇したのをうけて、国債の指値オペを実施しました。
(某経済紙が指値オペを「伝家の宝刀」と取り上げていたので、もっとすごい宝刀、外債購入やポリシーミックスが隠されているに違いないと思う質問者2です)

これにより、受動的に金融緩和がなされた、と。
(2016.11.25時点で、日本国債の2年ものは-0.263、10年ものは+0.039)
国債金利情報 : 財務省


しかし、先行き不安があることを挙げられます。
第一に相当期待されているトランプ氏の経済政策が期待外れとなる可能性。

第二にレーガノミックスと似ており、ドル高を引き起こし、米国景気にマイナスの面も考えられる、と。
また、ドル高を是正しようと間違った政策割当をしてしまったプラザ合意の二の舞(日本にとっては円の増価を伴い景気にマイナス)の懸念もあると。

拡張的な金融政策の助けなしには、拡張的な財政政策の効果が限定的になるとも指摘されています。

*マンデル・フレミング・モデル

“完全資本移動マンデル=フレミング・モデルにおいては、変動相場制下の財政政策は、一時的には有効であるが、長期的には無効になってしまうのである”

「【本】マクロ経済学基礎講義 <第3版>」(Pp190)

⇒ http://amba.to/29uqTqG



最後に「どえらい」ラッキーな黒田日銀総裁へ、不確実性への備えと受動的姿勢の再考を促されています。


野口旭さんのニューズウィーク日本版で

“「物価2%目標を2018年度中に達成」という日銀の新たな約束が、今度こそは実現される蓋然性は高い”

と述べておられましたが、根拠は明示されておりませんでした。


黒田日銀の異次元金融緩和は「失敗」したのか | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6191_1.php



日本は既に失わされた20年を過ごして来たのですから、財政金融のアクセルをもっとふかして、さっさとデフレを終わらせて、安定的に経済成長するようマクロ経済政策運営をお願いしたいもの。
司令塔であるはずの経済財政諮問会議など、頼りないのは残念ですが。