2013年の第二次安倍政権から大胆な金融政策を含むアベノミクス、そして、2014年4月の消費増税と日本経済に大きな影響を与えるイベントがありました。

日本銀行(以降、日銀)の金融政策が報道で取り上げられることも増えました。中でも、黒田東彦日銀総裁の発言には多くの注目が集まります。
量的質的緩和(QQE)と追加緩和(QQE2)を実施し、デフレ脱却へ向けて「2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に」2%の物価上昇率を目指すとしています。

QQEにばかり注目が集まりますが、みなさんは、黒田東彦日銀総裁の前任者である第30代日銀総裁を務めた白川方明(しらかわ まさあき Wikipedia http://ow.ly/2btmEv )さんのことを覚えていますか?
日銀生え抜きで、京都大学大学院公共政策教育部教授を歴任されるなど「学者肌」という評価もあったようです。

白川さんは「デフレ問題に対応するためには、政策当局、民間経済主体それぞれによる粘り強い取り組みが必要」と述べておられました。

➡️《【挨拶】最近の金融経済情勢と金融政策運営》(2009年11月30日)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2009/ko0911g.htm/

また、日銀総裁を一部の人にに惜しまれながら辞任された後、「日本経済の主な問題はデフレではなく、人口動態だ」と述べられ、記事によると、"白川前総裁は穏やかな口調ながら、日本のデフレは批判されるほど有害ではなく、日銀にデフレを解消する力はないと主張した" そうです。

➡️《白川前日銀総裁、金融政策による景気刺激の限界を指摘》(2014年5月15日)
http://m.jp.wsj.com/articles/SB10001424052702304408504579561861210923766?mobile=y

このようにデフレに対する危機意識が希薄で、中央銀行の金融政策ではデフレ脱却が難しいと受け取ることができるご発言をされていた白川さん。
それが、2012年2月14日(バレンタイン)には「物価安定の目途」で、当面1%の物価上昇率を目指しだしました。(本気かどうかは検証が必要ですね)

➡️《金融緩和の強化について》(2012年2月14日)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

さらに、2%の物価安定目標を掲げたのです。

➡️《金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について》(2013年1月22日)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122b.pdf

"日銀にデフレを解消する力はない" と主張されるお方が、なぜ物価安定目標を掲げたのでしょうか…
この点が「特異な」日銀総裁と私が感じた点です。
例えるならば、骨折している患者(デフレで苦しむ日本国民)を前に「(治療する力はないけど)治してみせます!」と目標を掲げ、下剤でも処方していた人⁈


公平を期すために白川さんの良かった探しをしておきます。沢山あるかもしれませんが、
三点ほど。

◼︎1.通貨の供給量とその予想が重要だということをご存知だった

"通貨の超過供給→財への支出増加→国内物価上昇(14頁)…為替レートの決定には現実の通貨供給量と並んで通貨供給量の予想も重要(15頁)"

"「名目的」(nominal)、「貨幣的」(monetary)な現象であるインフレーション"

""完全なフロート制の下ではマネーサプライはコントロール可能な内生変数"

とも書かれております。マネーサプライ論争がどこかの国であったそうなので、この白川さんの論文を紹介してあげたいですね。

➡️《マネタリー・アプローチについて》(若かりし頃の白川さん)
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/kks3-1.pdf


◼︎2.バレンタイン緩和(2012年2月14日)で、金融政策が株価、為替、予想インフレ率を動かすことを実証した。


◼︎3.辞任会見後、日経平均株価の引き上げ、為替レートを円安方向へ動かした。

"日経平均は2010年4月5日に付けたリーマンショック後のザラ場ベースの戻り高値1万1408円を上抜けた。2008年9月29日以来、4年4カ月ぶりの水準を回復した。東証1部の売買代金も今年最高の2兆8000億円超と売り買いのボリュームも改善している。"

➡️《白川日銀総裁の前倒し辞任―渡辺みんなの党代表は「もっと早くするべきだった」 》
http://ow.ly/2btmGc

"白川日銀総裁の辞任報道が意識され円安基調に推移し前日比+1.302円となる93.591円まで強含み取引を終えました"
➡️《白川日銀総裁の辞任表明を受けて金融緩和期待高まる!!》
http://yenspa.jp/25472.html



悪かった探しをするつもりはありませんが、白川さんが日銀総裁を務められた際のご発言や日本経済の動向を今後も振り返ってみたいと思います。



最後にオススメ本をご紹介。
岩田規久男日銀副総裁のご著書です。

〔日本銀行 デフレの番人〕 (日経プレミアシリーズ) http://amzn.to/1IuqGBj