グランドキュジーヌの確立 | 王様の料理人。料理人の王様。

王様の料理人。料理人の王様。

尊敬するアントナン・カレームについてのレシピや、古典料理、地方料理、調理科学や作り方のコツ。モダンキュイジーヌのレシピ、画像、作り方。フランス料理、スペイン料理についての歴史。


 14世紀に「フランス料理」は第一歩を踏み出したが、現在に続く「フランス料理」の基盤は、17世紀半ば以降、中世の名残を払拭した新しいスタイルの料理によって築かれた。この時代に確立した、ヴェルサイユ宮のルイ14世の食卓を頂点とするオート・キュジーヌはグランドキュジーヌとも呼ばれる。


 グランド・キュジーヌの成果を伝える最初の料理書はラ・ヴァレンヌの『フランス料理人』である。そこには中世以来のスパイスと酸味を主体にした味付けから油脂と肉のうまみへの嗜好の変化が顕著に表れ、それは料理の技法にも大きく反映している。また数多くの新しい料理が紹介され、近代的なソースにつながる、ラグー、ジュ、小麦粉のつなぎの登場、スパイスに変わるブーケ・ガルニなどの香味野菜・ハーブの香り付け、付け合わせの充実など革新的な基軸が打ち出された。この本は100年間で45版を重ねるほどの大成功を収め、これを機にピエール・ド・リュンヌ、LSR,マシヤロらによって堰を切ったように続々と新たな料理書が刊行された。

 こうした料理書への需要が生まれた背景には、当時の貴族・上流階級の料理への関心の高まりがあった。1661年、親政を開始したルイ14世は権力を王権に集中し、絶対王政を確立した。ルイ14世は1682年にはパリからヴェルサイユに宮殿を移し、その権勢の誇示野の為にたびたび豪華な祝宴を催し、また王の昼食も公開した。料理はヴェルサイユの宮廷生活の1つであり、宮廷貴族、さらに宮廷生活に憧れる上流階級の人々にとって料理の流行は重大な関心ごとになった。

 料理への関心の高まりは、新しい料理の創造と発展を促し、その技法はますます進化していった。ラ・ヴァレンヌからマシヤロにいたる料理書はその変化を顕著に表している。
  

 ヴェルサイユの豪華な宮廷の食卓はヨーロッパ各国のあこがれの的ともなり、その料理を手に入れる為に各国の宮廷・大貴族はこぞってフランスの料理人を招致した。こうしてフランス料理はヨーロッパの料理の覇権を握り、その圧倒的な名声を現在まで保持することになる。




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