アート鑑賞をしているといつかは出会う、
【前衛】【抽象】と呼ばれる表現。
 
【前衛】は型破りな感じ?
【抽象】は何を表しているか謎?
 
写実的ではない見た目に、
分からないと判断される方も多いのでは?
 
目の前に表現される、
【抽象的】ながら普遍的な作品に対して、
邪心を捨て自分自身と向き合える展覧会が
兵庫県立美術館で開催されています。
 
 

スーラージュと森田子龍

会場:兵庫県立美術館
 

兵庫県出身の前衛書の書家・森田子龍と、

フランスの抽象画家ピエール・スーラージュ

 

生まれた国は違えど、

抽象的な「白黒」の世界を表現した点。

墨や木炭、染料など素材自身の生命力を活かす点など、探求する方向性が似ています。

 

実際に交友関係を築かれていたようで、

今回の展覧会では二人の表現者の共鳴を

肌で感じることができます。

 

森田子龍の書について

※森田子龍の作品は撮影不可


ピエール・アレンスキーの「日本の書」

という短編映画が会場で上映されています。

そこで森田の書く姿が映されています。

 

大きな筆から放たれる墨の筆跡。

「自らの動きも解放して、
  文字に命を吹き込む。」


まさにその姿はアクションペインティングや

抽象画家のアプローチと近いものを感じます。

 

 

そして、墨や筆に膠に紙。

日本の書画における素材に対しても探求し続けたそうです。



特に淡墨のたまりに対しての美学には、

感嘆します。
 
森田の探究心は「墨美」という、
抽象絵画を紹介する雑誌の編集者としても開花されます。
 
この雑誌で「白黒の仲間」として、
スーラージュも紹介されています。
 
 

ピエール・スーラージュの作品について


スーラージュの作品に森田が惹かれたのは、

墨のような濃淡のある、表現がなされているからかもしれません。

 

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例えば、好んで使用したクルミ染料。

 

その自然な風合いで描かれた作品は、

黒でもなく、茶でもなく、

何とも言えない温かみがあります。

 

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そして掠れとたまりが美しく、

書画のような趣を感じます。

 

 

ただ、スーラージュの凄さは油彩でも

濃淡や浮遊感を表現していることです。

 

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奥行きのない重さのある作品と思いきや、

海のような深さとたまりがあるのです。

 

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遠くで見た時と近くの印象が、

ここまで違う抽象画に初めて出会いました。

 

いつまでも眺めて泳ぎたくなる光景でした。

 

 

時空を越える2人の共鳴

 

森田編集の雑誌「墨美」も展示されています。

 

「墨美」82号


その中で、書と抽象画の「時間の越え方」という対談を読み、今回の展示空間の時間の流れが止まっているように感じたことに気付いたのです。

 

 

前衛書も抽象画も、

墨や絵の具などの物質が「流れる」という

物理的な時間に逆らう傾向があります。

 

そして過去の事例からの脱却という、

歴史的な時の流れからも逸脱しています。

 

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人間は精神的にも、

たまる、落ちるという迷いに囚われます。

 

時の流れと共にその邪心は消えていくのか、

それとも留まるのか。

 

森田とスーラージュの作品は、

物理的な時間の流れを越えて、

私たちの精神へとアプローチするので、

展示空間は時間の流れを感じず、

異次元となっているのかもしれません。

 

 

鑑賞という瞑想

 

広い一部屋の展示室に、

スーラージュの作品《絵画》1987年

が1点だけ佇んでいます。

※撮影不可

 

鑑賞者は荘厳な空間の中で、

未知との遭遇の様な光と闇の作品に対面し、

自らのアイデンティティをも包まれるのです。

 

【前衛】【抽象】と呼んできましたが、

そもそも宇宙空間や精神世界は視覚では把握できない形のないもの。

 

二人の表現は作品という物質に留まることのない、普遍性との出会いです。

 

ぜひ自らも心身を解放される、

鑑賞という瞑想体験をしに展覧会へ訪れてみてください。


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「スーラージュと森田子龍」展
会場:兵庫県立美術館

会期:2024年3月16日−5月19日まで
巡回なしの貴重な展覧会

コレクション展(白髪一雄など)との
セット割引有

「キース•ヘリング」展との相互割引有