太古の門 | shin

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とりあえず詩やら色々

私たちは太古の門の前に

感情を得る事も出来ず
表情のないままに立っている
誕生前9ヶ月の微小な命だ

まだ形はなさない

その時々によって
輪郭はぼやけ また固定する


ただあるがままの存在
名は仮称


空から風がおりてきて
「それ」と名付けたなら
微小な塊は「それ」という命になる



赤い母衣を
個を識別出来ないように頭から被り
神を模倣した者達の列が


門の中から出でて
炎をその手に持ち


一人の裸足の女が胸に
抱いた赤子に問いかけながら
終わる事のない歩みを続けている


太古の門が時間の流れを
始点まで遡っても


私たちは真の意味で
無に還る事はない


何故なら
時の始点と終点は固く結ばれていて
過去と未来は連続しているのだから


メタモルフォーゼ


未来へと向かって存在しながら
胎児に還ってゆく


ただ

"ある" と言えばいいのだ


私たちは太古の門の前に
微笑しながら立っている
誕生後9ヶ月の命だ


時のやって来る場所と
時の行きゆく場所とを

同時に見て横たわる
しわがれた老人のまばたきひとつで
100年が過ぎてゆく


9ヶ月前の私たちと
9ヶ月後の私たちは


一連の時の地平の上に同時に
共振しながら異なる者として
存在する







私は
私たちは

異なった時間の上に立って同時に
太古の門に向かって

呟くのだ


「開け」と







お久しぶりです
懲りずにまた書きました

「中空球体」も最後書きかえました
ほんの少しですけど、興味のある方はどうぞ照れ




追記
少し書き足しました