バイオ | 株右衛門の経済&投資講座

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経営コンサルタント、心理カウンセラーで英国国立マンチェスター大学MBAホルダーの株右衛門が
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日本のバイオ医薬品産業は、世界的な競争の中で新たな局面を迎えています。かつて「製薬大国」と称された日本ですが、近年ではバイオ医薬品の開発競争で遅れを取り、その影響は研究開発と投資の両面に及んでいます。しかし、政府や産業界の新たな取り組みにより、この状況を打開しようという動きが活発化しています。

 

バイオ医薬品の市場は、2014年の24%から2021年には38%へと拡大し、今後もその割合は高まると予測されています。この成長を背景に、日本ではバイオ医薬品の研究開発における新たな戦略が求められています。経済産業省の報告によると、日本の製薬会社は世界的に存在感を低下させており、日本発のバイオ医薬品が世界に普及する例は限られています。これは、国内市場の縮小や研究開発の空洞化、さらには国際競争力の低下に起因していると指摘されています。

 

この問題に対処するため、日本政府は「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」を始めるなど、製薬産業への大規模な支援を行っています。2022年度第2次補正予算案では、新たに3000億円が計上され、創薬ベンチャーへの補助金や治験費用の支援が含まれています。これにより、国内での創薬ベンチャーの支援と、グローバル市場での競争力強化が期待されています。

 

また、日本企業はCDMO(医薬品開発製造受託機関)ビジネスに注目し、技術力を生かした水平分業を進めています。富士フイルムなどの企業は、CDMOビジネスに積極的に投資し、国際的な競争力を確立しようとしています。これは、製薬会社が研究開発から製造に至るバリューチェーンを一つの企業で行う「垂直統合型」から、複数の企業が各ステージを協働する「水平分業」への移行を示しています。

 

さらに、日本の製薬産業は、再生医療や細胞治療などの新たな領域にも注目を集めています。神奈川県の「かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク」(RINK)は、再生医療の産業化を目指し、幅広い企業・団体が連携を深めています。これにより、異業種間の協力とオープンイノベーションが促進され、国際的な競争力の向上が期待されています。

 

日本のバイオ医薬品産業は、国内外の環境変化に対応し、新たな成長戦略を模索しています。政府の支援と産業界の取り組みにより、国際競争力の回復と、バイオ医薬品の研究開発への投資が活性化することが期待されます。今後も、この分野の動向に注目が集まるでしょう。