「整体師」という生き方 ~ 一灯照隅、万灯照国 ~ -456ページ目

慢性症状が、なかなか治癒しない理由

人類の祖先である猿人が誕生したのは、一説によると、約700万年前と言われています。
そして、現代人と同じ知能・身体構造を持った新人(ホモ・サピエンス)が現れたのは、今から約20~30万年前だそうです。

我々の身体は数百万年かけて進化してきたのであり、実はその構造や仕組みは数十万年前の旧石器時代と何ら変わっていません。
つまり、我々の身体は、あの時代に自然の一部として、自然とともに生きていた頃のままなのです。

にもかかわらず、現代人は、当時の自然とは大きくかけ離れた環境の中で生活しています。
農耕が始まったのが、約1万年前で、そこから急激に文明が発達しました。
ここ数百年はそれが顕著であり、さらにここ数十年で社会環境や生活習慣は大きく変化しました。

我々は現在、コンクリートや化成品などの人工物に囲まれ、加工食品ばかりを口にしています。
一歩外へ出ると、常に死と隣り合わせです。
なぜなら、すぐそばを自動車や電車などの鉄の塊が、猛スピードで走っているわけですから。

また、かつて地球上に、これほどまでに人口が多くなった時代はありません。
利害や愛憎など、きわめて複雑な人間関係の中で暮らしています。
そして、新聞、テレビ、インターネット、さらには携帯電話など、処理しきれない膨大な量の情報が、毎日流れ込んできます。

それに加え、機械化や自動化による便利さと引き換えに、身体を動かす機会が減っています。
使わなければ、機能が退化したり鈍化するのは、当たり前です。
また、長時間のデスクワークなど、不自然で無理な姿勢も、身体の不調を招く大きな原因です。

我々は、これらを日常ととらえ、すっかり慣れてしまっています。
不自然に感じることもないし、驚きもしないし、脅威に感じることもあまりありません。

しかし、身体は違います。
我々の身体は、数十万年前の旧石器時代のままなのです。
身体は、不自然で異常な生活環境や習慣にさらされ、生命の危機を察知し、常に緊張を強いられているのです。

つまり、我々が気がつかないうちに、身体は大きなストレスを受け、緊張し、歪み、そして疲労が蓄積されているのです。
そしてその結果として、身体に痛みや不調を感じるようになります。

実は、身体の痛みや不快な症状は、身体が発している危険信号なのです。
身体が耐えきれなくなっているので、休息や調整が必要だと我々に訴えているのです。

しかし多くの場合、我々は危険信号を無視して、放置します。
そしていよいよ症状がひどくなると、薬を服用したり、人工的な治療によって、症状を抑えます。
一時しのぎで済ませるならまだよいのですが、なかなか改善がされないためにそれを継続し、さらに身体に負担をかけます。

また、病気や痛みは、身体の自然な治癒反応でもあるのです。
それを悪とみなし、薬物や無理な治療で抑制し続けたらどうなるかは、自明の理です。
結果的には、薬物や無理な治療で身体をいため続け、休息をとらずに身体を酷使するという、二重に身体に負担をかけることになるのです。

これでは、治癒しない慢性症状に陥って当然です。
身体と心はつながっていますから、心を病む人が増えるのも、当たり前ではないでしょうか