整体とマッサージ(4) | 「整体師」という生き方 ~ 一灯照隅、万灯照国 ~

整体とマッサージ(4)

みなさん、こんにちは。
無痛整体師、武道家の西田です。

「整体とマッサージ」というテーマで、過去3回の記事投稿をしました。

整体とマッサージ(1)
整体とマッサージ(2)
整体とマッサージ(3)
(※ぜひ上記リンク先記事も、ご一読ください。)

私共の整体院では、肩こりの解消のために、具体的に何をしているか。
今回は、それについて書いてみたいと思います。

肩こりだけでなく、他の症状でも基本的には同じです。
なので、各種お悩みをお持ちの方に、参考にしていただければと思います。
なお、長くなりますので、何回かに分けます。

まず私共では、以下のことを基本方針としています。

一、その場しのぎの慰安や、対症療法はしない。
一、症状を治すのではなく、症状の生じにくい身体になっていただく、あるい自分で解消できるようになっていただく。


もし、上記にご賛同いただけない場合は、施術をお断りいたします。
即効性を求める方も、お断りする場合があります。
状況により、例外もありますが、人のためにならないことはしない。
それだけは厳守しております。

さて、整体においては、次の4つのプロセスを経ます。

1.観察
2.判断
3.実行
4.確認


最初のプロセスは、「観察」です。
まずは時間をかけて、お客さまから聴き取りを行います。

なお私共では「患者さん」ではなく、「お客さま」とお呼びします。
私共は、医療機関ではないからです。
それ以前に、患者とは「患う(わずらう)者」と書きます。
大切なお客さまを「患う者」と扱うことは、私には抵抗があります。

かといって、クライアントさんとも、呼びにくい。
ゆえに、いちばんシンプルな「お客さま」とお呼びしております。

さて、聴き取りです。
次のような内容を、お客さまから、詳しくおうかがいいたします。

・どこに、どのような症状があるのか。
・それは、いつ頃からか。
・いつ、その症状を感じるのか。
・静止時か、動作時か。
・動作時なら、どのような動作なのか。
・あるいは、どのような体勢、姿勢なのか。
・常に、そう感じているのか。
・日によって、あるいは時間帯によって違うか。
・寝起きはどうか、就寝中はどうか、仕事終わりはどうか。
・他に症状は、ないか・・・

それらとともに、ご職業や生活習慣についてもうかがいます。
場合によっては、家族構成などもうかがいます。
また、お客さまの身体の状態を、目視や触診にて、確認します。

痛みやこりは結果であり、必ず原因があります。
それは多くの場合、日常生活に潜んでいます。
根治を目指すなら、それを究明し、絶つことが、必要不可欠です。

ほとんどの場合、原因は、ひとつではありません。
複合していますし、特定は困難です。
しかし、この段階で詳細に観察を行い、できる限りの推測を行うことが、早期治癒の近道です。
ぜひご協力をいただきたいと思います。

なぜ、観察を重要視するのか。
その理解を深めていただくため、前回のおさらいをしておきましょう。

身体には、「反射」と「学習」という機能があります。
それによって、動作や姿勢が形成されます。
動作や姿勢を形成しているのは、筋肉の働きです。
筋肉に命令を下しているのは、脳です。

形成された動作や姿勢によっては、骨格の歪みを生じ、局所へ過剰な負荷がかかります。
しかし、脳は、同じ命令を送り続けます。
その結果、特定の筋肉の過緊張や過疲労を生じます。
血液、体液、気の循環が滞り、痛みやこりとなって現れます。

次に、人体の骨格と、筋肉の特性を押さえておく必要があります。
まずは、骨格から見て参りましょう。
※イラストは、以下のサイトより拝借させていただきました。
アイリス・アイリスの作業現場

「整体師」という生き方 ~あなたがあなたであるために、心と身体にやさしさ、ぬくもり、安らぎを~-肩関節

肩関節の骨格は、上図のようになっています。
鎖骨の先に肩甲骨が連結され、肩甲骨に上腕骨がはまっています。
鎖骨は胸骨の上端に連結されています。
その連結部を、胸鎖関節と呼びます。
その関節を支点に、肩甲骨ごと、肩や腕が動きます(下図参照)。

「整体師」という生き方 ~あなたがあなたであるために、心と身体にやさしさ、ぬくもり、安らぎを~-肩関節

肩関節の周辺には、多数の筋肉や靭帯が付着しています。
そのため、数キロある腕が保持され、自在に動くのです。

非常に大雑把に申し上げると、これらの筋肉の不調和が、肩こりを招いているのです。

多くの場合、肩腕ユニットが、前下方へ転位をします。
そのため、肩部周辺の筋肉が慢性的に伸長緊張を起こします。
(※肩腕ユニット=鎖骨+肩甲骨+上腕骨)

頭部の前下方転位も、見逃せない原因のひとつです。
人間は、目が頭部前面についています。
ゆえに、どうしても姿勢が前傾傾向になります。
頭部の重量は、約5~6キロあります。
それを支えるために、肩部、頸部の筋肉が緊張を起こします。

また各種作業をする際に、私たちは視線を下に落とします。
否応なく、肩部、頸部筋肉の緊張を招きます。

さらに現代は、仕事中だけでなく、休息時にも眼を酷使します。
携帯電話やスマートフォン等を使うからです。
そのため、眼の疲労や緊張も生じます。
眼球を支え、動かす筋肉は、後方で頸部の筋肉と深い関係を持ちます。
その結果、頸部筋肉の緊張にさらに拍車をかけます。
咀嚼筋など、頭部や顔面の筋肉の緊張も、見逃せません。

拮抗関係にある筋肉は、一方が緊張すると、他方も緊張します。
あるいは、重力により常時伸長緊張を強いられた筋肉の拮抗筋は、慢性的に弛緩した状態となり、制御不能に陥ります。
ただし、筋肉の拮抗関係や協調関係は、複雑です。
特に、可動域の大きな肩関節や股関節周辺は、非常に複雑です。
いずれにせよ、緊張や制御不能の状態が、不調和の連鎖を招いています。

不調和の連鎖は、全身に及びます。
そのため、肩こりがさまざまな症状を引き起こす場合もあります。
また、他の部位の不調和が、肩こりを招く場合もあります。
いずれにせよ、肩がこるからと、肩周辺だけをみていても、解決しません。

上記のような骨格や筋肉の特性。
あるいは、それらと日常生活習慣の関係。
これらから、そのお客さまの症状の原因を推測します。
そして、それを解消すべく、施術や指導の内容を決定します。
そのために、観察を重視し、時間をかけるのです。

ここで申し上げたいのは、疲労や緊張はあって当たり前ということです。
人体は、重力の支配を受けています。
それを支えるために、疲労や緊張は仕方のないことです。

問題は、緊張を自分で解くことができず、筋肉の不調和が解消されず、疲労が十分に回復しない状態に陥っていることです。

それが、なぜなのか。
それを推測して、次に何を「実行」するかを「判断」します。

「実行」の目的は、筋肉に対する、脳の緊張命令を解くことです。
あるいは、脳の筋肉制御機能を正常化することです。
それにより、脳が適切に身体を制御できる状態に導くことです。

そのために、何をするか、次回以降にお話ししたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

整体とマッサージ(5)へ続く