私たちはつい、まっすぐ一直線に進むことが一番効率が良いと思いがちです。

 

遠回りしない。余計なことをしない。できるだけ平坦に、できるだけ最短で進む。

見た目にも無駄がなく、いかにも合理的に見えます。

 

でも、物理の世界には少し面白い話があります。

直線がいちばん早いように思えますが、実はそう単純ではありません。

 

高いところから低いところへ物体が移動するとき、最も早く到着する道は、必ずしも一直線ではない。

むしろ最初に下がって勢いをつけたほうが、直線より距離は長くても早く先に進む。

 

これを「最速降下曲線」と呼びます。

 

 

この話は、仕事や人生にも通じるものがあるように思います。

私たちは日々、効率を求めます。できるだけ無駄なく、一直線に進みたいと思う。

もちろんそれは大切です。

ただ、何でもかんでも最短で進めばよいかというと、そうとも言い切れません。

 

たとえば、新しいことを学ぶ時間や仲間と対話する時間。

その場では遠回りに見えても、あとで判断が速くなり、迷いが減り、結果として全体が前に進みやすくなることがあります。

 

人材育成も同じです。

答えだけを与えれば、その場は早く見えます。しかし、それでは自分で考えて動ける人は育ちにくい。最初は時間がかかっても、考える機会や経験を積ませたほうが、後に大きな力になることがあります。

 

組織の変革も似ています。

一時的には負荷がかかります。説明も調整も必要で、短期的にはスピードが落ちることもある。しかし、そこを丁寧に進めたほうが、結果として長い目では効率が高くなることがあります。

 

大切なのは、遠回りに見える時間が、次の加速につながっているかどうかです。

ずっと平坦で、ずっと順調で、ずっと一直線。

そんな進み方が理想に見えることもありますが、実際には、先に勢いをつけることで、距離が長くても先に着くことがあります。

 

まっすぐかどうかではなく、全体として前に進めているか。

最短距離かどうかではなく、最短時間になっているか。

 

最速降下曲線。

 

一見すると遠回りに見える道が、実は最も早い道であることがある。

そんなことを思い出させてくれる考え方だと思います。