フリーランスの人は、個人事業者に区分されます。
したがって、毎日の取引を帳簿に記帳しなければなりません。
作成した帳簿に基づいて確定申告書を作成することになります。
帳簿を複式簿記で作成すると青色申告特別控除が受けられます。
青色申告特別控除は、計算された利益の額から、さらに最大55万円を控除することが出来ます。節税効果は、所得の多寡によって異なりますが、所得税率5%の方は所得税最大27,500円、地方税の所得割最大55,000円となります。
令和5年分について青色申告承認申請書を提出していない方は、来年、令和6年3月15日までに令和6年分について税務署へ青色申告承認申請書を提出すると、令和6年分(令和6年1月1日から12月31日分)について青色申告者となるので令和6年分から青色申告特別控除が受けられます。
さて、
帳簿の作成ですが、今年の11月分まではすでに完成していると思いますが、
まだ帳簿を作成出来ていない人は、今年中にまとめておくと慌てずに済みます。
この時役に立つのが、市販されている個人事業用の会計ソフト(青色申告用)です。
青色申告承認申請書を提出して令和5年分から青色申告者となっている人で、まだ帳簿の作成をしていない方はこれからでも間に合います。
会計ソフトで作成した帳簿は複式簿記で作成されているので、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出し青色申告者となっている人は最大55万円の青色申告特別控除が受けられます。
会計ソフトへの入力は、取引先への請求書、経費の領収書などを入力していきます。入力と同時に帳簿が自動的に作成されます。
最終的には、会計ソフトから帳簿を出力して保存し、確定申告作成資料として青色決算書作成資料又は事業収支報告書作成資料を出力し、それを参照して確定申告書を作成することになります。
(注)青色申告承認申請書の提出期限
1 原則、承認を受けようとする年の3月15日までです。
2 その年1月16日以後に開業した場合には、開業の日から2か月以内です。
※ まだ青色申告承認申請書を提出していない人は、令和6年3月15日までに提出
すると令和6年分から青色申告者となります。
令和5年分の確定申告書と同時に令和6年分の青色申告承認申請書を提出しよ
うと思っている人は、必ず、令和6年3月15日までに提出しなければなりませ
ん。1日でも遅れると、青色申告は令和7年分からとなります。注意してくださ
い。
☞ 会計ソフトの主な留意点(一般的な事業)
1 減価償却資産の減価償却費については、年末に計算して入力します。
なお、会計ソフトの固定資産台帳へ登録している場合は、固定資産台帳の減価
償却費自動仕分けを選択すると自動的に仕訳されます。
2 12月31日現在で請求した売上が未入金となっているもの、物品等を購入し
て代金が未精算の取引を入力します。
3 すべての入力を終えたら、確定申告書作成資料を印刷し、確定申告書を作成し
ます。
4 「次年度繰越」のボタンを押して翌年分の帳簿を作成します。
→→→「次年度繰越」の操作は失念されそうですが、重要です。
今年の資産・負債の残高や固定資産台帳が、翌年分の帳簿に転記されます。
令和5年分の帳簿から資産・負債科目が引き継がれて令和6年分の帳簿が作成
されることになります。
次年度繰越の操作が行われないと正しい帳簿が引き継がれません。
青色申告を適用している場合は、翌年分以降の資産・負債には本年分が引き継
がれていないので間違った貸借対照表となってしまいます。当然、55万円の青
色申告特別控除が適用されなくなります。最大の注意が必要です。
5 使い始めには、必要な設定(消費税関係などの初期設定)をもれなく設定しな
いと正しい帳簿にはなりません。ここが肝心です。
☞ 「報酬、料金、契約金又は賞金の支払調書」の役割
「報酬、料金、契約金又は賞金の支払調書」を取引先から交付されことがありま
す。この支払調書は単に取引先との1年間の取引総額と源泉徴収された所得税額が記
入された資料にしかすぎません。
自分の記帳した帳簿と照合し確認出来たら、その他の関係資料とともに証拠書類
として保存します。
税務署への提出は不要です。
税務調査があったり、税務署から提出を求められたりした時にすぐ提出等できる
ように年分に区分けして保存しておくとよいと思います。
☞ 売上の計算と源泉徴収税額の計算
申告納税ですので、確定申告は全て帳簿を基礎として申告します。
申告する売上は帳簿の売上科目の1年間の合計額を記入します。
源泉徴収税額も仮払金の中から源泉徴収税額を集計した金額を申告します。
申告する金額は、全て帳簿上の科目の合計額から記入します。
(例)売掛金入金の仕訳例
日 付 |
摘 要 |
借 方 (左) |
貸 方 (右) |
||
科 目 |
金 額 |
科 目 |
金 額 |
||
10月25日 |
Tからデザイン報酬が入金 |
甲普通預金 |
1000円 |
売掛金 |
1100円 |
源泉徴収税額 |
仮払金 (源泉所得税) |
100円 |
|
|
|
合 計 |
|
1100円 |
|
1100円 |
青色申告の特典である青色申告特別控除が受けられる人は、正規の簿記の原則
(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及
び損益計算書を確定申告書に添付して、法定申告期限内に提出することが必要で
す。
青色申告特別控除は、算出された利益の額から、さらに最大55万円を控除しま
す。
また、電子申告をすると青色申告特別控除額が10万円増額となります。
しかし、「貸借対照表」を添付することができないときには、青色申告特別控除
額は10万円となります。会計ソフトの「次年度繰越」の操作を重々忘れないよう注
意しましょう。
(注) この電子申告には、税務署の確定申告会場でのパソコンによる簡易電子申告
は含まれません。あくまでも自宅等でパソコンやスマートホンにより自分で電子
申告しなければ青色申告特別控除額が10万円増額となりません。
⦿⦿⦿⦿⦿ 雑談 「借方」・「貸方」 ⦿⦿⦿⦿⦿
「借方」・「貸方」の文字の意味はほぼなく「左欄」・「右欄」でよい
借方は、英語表記で“Debit”又は“debit side”となります。
貸方は、英語表記で“Credit”又は“credit side”となります。
複式簿記の原型は中世イタリアの金融業を営む商人の記帳法といわれています。
この商人は、帳簿の左欄に「商人からお金を借りている人の情報」を記入し、右
欄に「商人を信用して商人にお金を貸してくれている人の情報」を記入していまし
た。
しかし、現在では金融業以外のすべての業種で複式簿記が採用されていることか
ら単に「左欄」・「右欄という意味合いしかありません。
左欄には財産を記入し、右欄に負債を記入します。
財産とは、現金、銀行預金、貸付金、土地、建物、商売上の棚卸商品などです。
負債とは、借入金、ローン、買掛金、未払金などです。
これらを総称して、貸借科目といいます。
そして、毎日の事業の取引は、
左欄に経費や損失などを記入し、右欄に収入や雑収入などを記入します。
これらを総称して、損益科目といいます。
1年間の記帳が終了したら、
今年1年間の財産・負債の最終状況をまとめたものを作成します。
これを「貸借対照表」といいます。
各貸借科目の最終残高を左右の欄にまとめた表となります。
この表で今年の財産の増加額(利益)又は財産の減少額(損失)がわかります。
また、損益科目の1年間の状況をまとめた表も作成します。
この表を「損益計算書」といいます。
各損益科目の1年間の合計額を左右の欄にまとめた表となります。
この表で今年の利益又は損失がわかります。
白色申告では「収支計算書」となります。
(注) 「貸借対照表」、「損益計算書」の形式は、次の2種類あります。
1 表形式によるものが勘定式といわれます。
2 報告式と呼ばれる形式もあります。
貸借科目については、上から順に資産、負債、純資産の項目と金額を並べ
ています。
また、損益科目については、上から順に売上高、売上原価、販売費及び一
般管理費、営業外収益・費用…当期純利益の項目と金額を並べています。
<参考>
〇 イタリアの商人(金融業)の帳簿
左 欄 |
右 欄 |
借 方 |
貸 方 |
商人から 借金をしている人の情報 |
商人を信用して 資金を貸している人の情報 |
☟
〇 現在の帳簿(仕訳)
|
左 欄 |
右 欄 |
借 方 |
貸 方 |
|
貸借科目
|
財産の増加 負債の減少
|
負債の増加 財産の減少 元入金(資本金) |
損益科目
|
経費の発生 損失の発生 |
事業収入の発生 その他の収入の発生 |
⦿⦿⦿⦿⦿ 終わり ⦿⦿⦿⦿⦿