前回の続きです。
募集時の動画でよく見えた馬でも、
調整過程において気性面で不安が出てくることがある。
というのが、前回の要約です。
この気性面の変化には、大きな転機が2回あります。
1回目は、乗り慣らしです。
今まで放牧地でのびのびと暮らしていて、
人間からはとにかく可愛がられてばかりいた時期に、
突如、人間が背中に乗るようになるのです。
馬によっては、大きな衝撃となる場合があります。
まったく意に介さない馬も、もちろんいますが。
そのため、乗り慣らしは慎重に段階を踏んで進めていきます。
時にはモンティ・ロバーツのように、その場で乗れるようにしてしまうこともあります。
その場合でも、乗り慣らしが完了してからも、調整メニューは慎重にします。
一度嫌になってしまうと、あとあと面倒だからです。
調教前の準備運動で歩かせる場合も、ウォーキングマシンで済ませてしまわず、
ハミ受けを覚えさせながら人間が乗ることで、それが当たり前にしていくのです。
さて、こうしてデビューまでこぎ着けたとしても、また気性面に変化がでることがあります。
2回目は、新馬デビューです。
育成段階では大人しくて乗りやすかった馬が、突如として乗り難しくなることがあります。
レースを経験すると、馬の本能が目覚めるからだと思います。
この場合、血統的な要素が強いように感じます。
いくら環境を整えて慎重に進めても、レース一回でガラリと変わってしまいます。
以前、白井厩舎からデビューした芦毛の2歳牡馬がいました。
すごく乗りやすくてスピードがある馬で、武豊騎手がデビュー戦に騎乗してくれました。
残念ながら新馬勝ちはできませんでした。
その後、白井厩舎で厩務員をしていた大学時代の同期から
「武さん、二度とこの馬には乗りません、って言ってるで。どうなってんねん?」と
聞かれました。
不思議に思っていたのですが、放牧に帰ってきたときにその変わりっぷりに愕然としました。
あんなに乗りやすかった馬が、ムキになって走り折り合いもクソもありません。
その後、牧場でも相当乗りにくい馬になってしまいました。
この例は、少し極端かもしれませんが、程度の差はあれど起こりうることです。
リオンディーズも、こんな感じだと思います。
トレセンでは課題を克服して調整できても、レースではカーッとなってしまう。
自分を抑えられなくなってしまうのだと思います。
そういうわけで、一口でのリスクを減らすなら、調教が進んでから買うのがいいですね。
しかし抽選になる人気馬ではそんなの無理なので、賭けになってしまいますね。
自己責任で、選択しましょう。