どうもどうも、けいです。

 

鉄道ファン、特に「曲」を楽しむ方々の中で有名なのが、

北陸地区で使用されている接近メロディーです。

 

しかし、この警報機から流れる曲というのは、

ちょっとどころではない恐ろしい事情を背景にして作曲された曲や、

本来駅で流すべきではないような

ネガティブすぎる歌詞を含んでいる曲も存在します。

 

今回は主な接近メロディー8曲について、原曲の解説を行います。

内容はシャープ製メロディーIC「LR34611」に収録されている以下の曲です。

  • アニーローリー
  • 村の鍛冶屋
  • かっこう
  • グリーンスリーヴス
  • エリーゼのために
  • ローレライ
  • さくらさくら
  • 禁じられた遊び

 

では、どうぞよろしくお願いします。

 

0.そもそも接近メロディーとは…

北陸本線の各駅でよく見られる設備のことです。

列車接近時に駅ごとに違ったメロディーが流れてきます。

 

対象駅にはこのような警報機のいずれか(または両方)が設置されていますが、

今回解説するメロディーはすべて上の白い警報機から流れるメロディーです。

 

ファンの間では「旧音源」と「新音源」の名で呼ばれる2つの音源があり、

「旧音源」はシャープ製のLR34611というメロディーICの音源を、

「新音源」はMIDI音源を使用しています。

実は新音源はPCソフト「Domino」で完全再現が可能です。

…まさかとは思うがそのままこれを使っているのか?

 

北陸本線とは言いましたが、北陸本線近傍の路線や、

2015年に経営分離された元北陸本線の第三セクター鉄道でも

存在が確認されています

これまでのところ、上の白い警報機が設置され、

北陸本線と同様のメロディーが流れていることが確認されているのは、

以下の各路線になります。

  • JR北陸本線
  • JR信越本線
  • JR小浜線
  • JR越美北線
  • JR城端線
  • JR草津線
  • JR奈良線
  • えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン
  • えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン
  • IRいしかわ鉄道線
  • のと鉄道七尾線

 

※元北陸本線のあいの風とやま鉄道線内にも転換直後は設置されていましたが、

あいの風とやま鉄道は各駅オリジナルの接近メロディーを採用したため

現在は撤去されています(写真下のような黒い小型の警報機に更新、音もピンポン音に統一)。

また、JR七尾線、JR高山本線でも同型の警報機が確認されていますが、

流れる曲はいずれもオリジナルメロディーです。

 

1.アニーローリー

北陸本線を代表する接近メロディーです。

 

原曲はスコットランド民謡で、作曲したのはジョン・ダグラス・スコット夫人です。

ウィリアム・ダグラスの詩をもとにして作られた曲で、

19世紀に誕生したようです(ダグラス自身は17~18世紀に生きた人)。

 

「アニーローリー」というのは実在した女性の名前で、

マクスウェルトン卿のサー・ロバート・ローリーのもとに

1682年に生まれたとされています。

 

アニー・ローリーはスコットランド中に知れ渡る美人だったようですが、

彼女は「アニーローリー」の詩を書いたウィリアム・ダグラスと

相思相愛の関係だったとのこと。

 

2人は結婚しようと、アニー・ローリーの父

ロバート・ローリーに許しを求めたようですが、

歳の差やアニー・ローリーの若さ、そして何よりダグラスがローリー家にとって

内戦中の敵方勢力であったことから、ロバート・ローリーはこれを拒否

ダグラスは悲しみに暮れ、この詩を書いたとされています。

 

結局ダグラス、アニー・ローリーともに別の人と結ばれることとなりました。

 

ということで、アニーローリーは簡単に言ってしまえば恋の歌です

歌詞ですが、まず原詩は以下のようになっています。

ちなみに歌詞中の"Annie Laurie"が「アニー・ローリー」を指します。

 

1
 Maxwelton's braes are bonnie,
 Where early fa's the dew,
 Twas there that Annie Laurie
 Gi'ed me her promise true.
 Gi'ed me her promise true -
 Which ne'er forgot will be,
 And for bonnie Annie Laurie
 I'd lay me down and dee.
2
 Her brow is like the snaw-drift,
 Her neck is like the swan,
 Her face it is the fairest,
 That 'er the sun shone on.
 That 'er the sun shone on -
 And dark blue is her e'e,
 And for bonnie Annie Laurie
 I'd lay me down and dee.
3
 Like dew on gowans lying,
 Is the fa' o' her fairy feet.
 And like winds, in simmer sighing,
 Her voice is low and sweet.
 Her voice is low and sweet -
 And she's a' the world to me;
 And for bonnie Annie Laurie,
 I'd lay me down and dee.

うっすらと英語ですが、なにぶん19世紀のスコットランドの曲なので、

ちょくちょく日本の学校で習わないような表現が出てきます。和訳しましょう。

Wikipediaには以下の歌詞が和訳として掲載されています。

 

1
 春の岸辺に 咲きし花よ 
 君が姿を 何にたとう
 その御前(みまえ)に この身ささぐ
 愛(いと)しアンニー・ローリー
 われは誓う
2
 雪のかんばせ 清きうなじ
 われを見給う 青き瞳
 その輝き 空の星か 
 愛(いと)し アンニー・ローリー
 夢に浮かぶ
3
 秋の木の葉の 露をこぼす
 野のそよ風か 君が御声(みこえ)
 清(すが)し響き 心揺する
 愛(いと)し アンニー・ローリー
 われは慕う

とにかくアニー・ローリーが美人だということを言っています。

 

北陸ではこれが接近メロディーになっているわけです

なんとも微妙な感じになります。

が、接近メロディーとして使われるならまだいい方で、

JR東日本の大宮総合車両センターではゴツいトラバーサーが動く際に使われたり、

果ては台湾でゴミ収集車のメロディーに使われたりしているそうです

自らの渾身の恋歌がゴミ収集車に使われていると知ったときの心中や察するに足る

 

使用駅は以下の通りです(カッコ内は現在不使用の駅)。

旧音源

(浦本)、(梶屋敷)、(青海)、(越中宮崎)、(西入善)、(魚津)、(倶利伽羅)、

(森本)、(東金沢)、小舞子、(明峰)、(小松)、(動橋)、(北鯖江)、

(湯尾)、(新疋田)、(砺波)、越前大野、(若狭本郷)、(寺庄)、(油日)、(山城多賀)

※浦本~新疋田まで転換部含めた北陸本線、砺波は城端線、越前大野は越美北線、

若狭本郷は小浜線、寺庄、油日は草津線、山城多賀は奈良線

野々市駅は警報機自体が違っていたので同一音源か断定できず除外

 

新音源

浦本、梶屋敷、親不知、市振、津幡、森本、東金沢、西金沢、野々市、(松任)、

美川、能美根上、明峰、粟津、動橋、(加賀温泉)、大聖寺、越前花堂、北鯖江、湯尾

※全駅転換部含めた北陸本線

 

なお、これ以降のメロディーにも言えたことですが、

如何せん数が多いので抜けや余計な要素があったらご指摘ください

というか面倒すぎてだいぶ雑にまとめたので抜けしかない気がします…

 

2.村の鍛冶屋

やはり北陸を代表するメロディーです。

 

これは日本の同様で、文部省唱歌でもあります。

作詞者、作曲者は不明とされていますが、1913年の教師用教科書には、

歌詞評釈として以下のような表記があります。

 

「これは讀本巻八の第十に『かぢや』といふ題で、昔刀鍛冶であつた鍛冶屋の爺さんの話がある。これから來た趣向である。」

 

「讀本」というのは1903年の国定教科書「尋常小学讀本」のことで、

その本にはこのような話が載っているのです。

 

第十 かぢ屋

僕の近所に年よりのかぢ屋があつた。せが高く、目がするどくて、ちよつと見ると、おそろしいが、いたつて氣だてのやさしい老人であつた。

「トンテンカン、トンテンカン。」と、毎朝早くから弟子を相手につちを打つ音が聞える。一日も休んだ事がない。僕は時々其の仕事場の前に立つて見てゐた。ある時は釘をこしらへてゐた。ある時は鎌をきたへてゐた。又車のわを打ってゐた事もあつた。僕の家で一度つるべの金たががこはれた時、つくろひを頼んだ事があつたが、翌日すぐにこしらへてくれた。夏のどんな暑い日でも、あせを流しながら、暮方まで働いてゐた。仕事をしながら、僕に色々な話をした事もある。ある時の話に、 「自分は今こそこんな小刀や釘などを造ってゐるが、元は少しは人に知られた刀かぢで、若い時から何十本となく大太刀・小太刀をきたへた。刀は武士のたましひといはれたものだから、きたへる時は身を清めて、一心不亂に打つたものだ。」といつた。

何時も丈夫さうな老人であつたが、去年の暮に死んでしまった。其の時分までよそへ奉公に行つて居つた若いむすこが、今では其の後をついで、朝から晩まで相かはらず、「トンテンカン、トンテンカン。」と働いてゐる。

 

どうもこれがもとになって「村の鍛冶屋」は作成されたようで、

1912年の「尋常小学唱歌(四)」に初めて姿を現します。

当初の歌詞は以下のようなものでした。

 

一、
暫時も止まずに槌打つ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
ふゐごの風さへ息をもつがず
仕事に精出す村の鍛冶屋

二、
あるじは名高きいつこく老爺おやぢ
早起き早寝のやまひ知らず
てつより堅しと誇れる腕に
勝りて堅きは彼が心

三、
刀はうたねど大鎌小鎌
馬鍬に作鍬さくぐは 鋤よ鉈よ
平和の打ち物休まずうちて
日毎に戰ふ 懶惰らんだの敵と

四、
稼ぐにおひつく貧乏なくて
名物鍛冶屋は日日に繁昌
あたりにるひなき仕事のほまれ
槌うつ響にまして高し

 

 

 

 

 

当初は4番まで存在し、兵器は作らずとも農機具を鍛え、

非常に職務に勤勉な様子を描き出していました。

しかし、日本が戦争に突入すると、1942年に歌詞が書き換えられることになります。

 

一、

しばしも休まず槌打つ響

飛び散る火花よ はしる湯玉

ふゐごの風さへ息をもつがず

仕事に精出す村の鍛冶屋

 

二、

あるじは名高いいっこく者よ

早起き早寝のやまひ知らず

鐵より堅いとじまんの腕で

打ち出す刃物に心こもる

 

そう、3番以降が丸々カットされてしまったのです

特に3番では平和を謳っており、戦時下の教育に不適とされての削除のようです。

また、残存した1番と2番の歌詞も少々手が入っていることがお分かりかと思います。

 

1945年に戦争は終わりますが、その2年後の1947年にはまたも歌詞が改訂。

これが以下の通りです。

 

一、

しばしも休まず槌うつ響き

飛びちる火花よ はしる湯玉

ふいごの風さえ息をもつがず  

仕事にせい出す村のかじ屋

 

二、

あるじは名高い働きものよ

早起き早寝のやまい知らず

永年きたえたじまんの腕で

うち出す鋤鍬 心こもる

 

表現が簡単なものになっていることが分かります

この曲は小学生向けのものでしたが、

これまでの文語調では分かりづらいとされたようです。

 

しかしながら、戦争が終わってもなお3番と4番は復活しませんでした

この改訂には異論もあり、この曲の核心は3番と4番の平和、労働賛美にあるとして、

曲のキモを切り落とすのはいかがなものか、というものでした。

 

その後、この曲は歌詞の復活どころか教科書からの抹消という憂き目に遭います

高度経済成長期以降に農業の機械化が進行し、

鍛冶職人の生計が崩壊して鍛冶屋は姿を消していきました。

子どもたちが鍛冶屋の情景を想像しづらくなった」として、

1977年には文部省(現:文部科学省)が出す小学校指導要領の共通教材から削除

1985年には教科書からも完全に消滅し、過去のものとなってしまいました。

 

しかし、現在では北陸本線の多くの駅で採用されていることもあり、

歌詞や題名は知らずともメロディーは知っている曲となるでしょう。

教科書からは消えましたが、北陸の住民にとっては馴染み深い曲の一つです。

やったね文部省!

 

なお、使用駅の1つである春日山駅の待合室には、

村の鍛冶屋の楽譜と歌詞が貼りだされています。

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源

(牛ノ谷)、(王子保)、春日山、笠島、(十村)、(上中)、(若狭本郷)

※牛ノ谷、王子保は北陸本線、春日山、笠島は転換部含めた信越本線、十村~若狭本郷は小浜線

なお、笠島の警報機は故障して音が鳴らない模様

 

新音源

名立、浦本、親不知、市振、西金沢、牛ノ谷、細呂木、丸岡、森田、

大土呂、北鯖江、王子保、南条、今庄、南今庄

※全駅転換部含めた北陸本線

 

3.かっこう

ドイツ民謡で、日本でもよく知られた童謡です。

そのわりにはWikipediaに記事がないようだが…

 

とりあえず歌詞を書いた方が早いです。

 

かっこうかっこう しずかに

よんでるよ もりのなか

ほうらほうら かあさん

 

かっこうかっこう しずかに

ないてるよ もりのなか

ほうらほうら あさだよ

 

小学校の音楽の時間に習った方も多いのではないでしょうか?

もとはドイツの曲なので、もしかしたら別の歌詞で習った方もいるかもしれません。

いずれにせよメロディーを聴けば思い出すはずです。

 

ただし、原曲はループなんかに対応していないので、

LR34611音源は曲の最後をループ対応に変えています

新音源もおそらくLR34611に倣っているため、ループ旋律は健在です。

 

なお、かつての小杉駅では「かっこうワルツ」という曲が使われていましたが、

こちらはスウェーデン民謡の全く別の曲です

たまに盛大に間違えられているのを見るのでご注意を。

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源

(越中宮崎)、(西入善)、(魚津)、(西高岡)、小舞子、(能美根上)、(新疋田)、笠島

※越中宮崎~新疋田まで転換部含めた北陸本線、笠島は信越本線

なお、笠島の警報機は故障して音が鳴らない模様

能美根上でかっこうが使われていた当時の駅名は「寺井」

 

新音源

有間川、名立、えちご押上ひすい海岸、西金沢、新疋田

 

4.グリーンスリーヴス

北陸本線ではあまり採用例がないメロディーです。

原曲はイングランド民謡なのですが、これがとんでもない曲でした。

 

エリザベス1世の治世に

イングランド・スコットランド国境付近で生まれたとされますが、

興りについては謎な点が多くあります。

 

記録として残っているのは2つあり、

まず1580年のロンドンにて、書籍出版業組合の記録にあるもの。

ここには"A New Northern Dittye of the Lady Greene Sleeves"とあり、

和訳すれば「レディ・グリーンスリーヴスの北方新小曲」です。

しかし、この印刷文はいまだに見つかっていないとのこと。

 

2つ目は、『掌中の悦楽』中にある記録。

こちらには"A New Courtly Sonnet of the Lady Green Sleeves"とあり、

これも和訳すると「レディ・グリーンスリーヴスの宮廷風新ソネット」です。

 

ですが、どちらも録音も楽譜も残っていないので、

どちらが現代に伝わる「グリーンスリーヴス」なのか、

または両方とも同じ曲を指すのか、はたまた全く別の曲を指すのか、

それすら分かっていません。

 

また、題名でもある「グリーンスリーヴス(Greensleeves)」が

何を意味しているのかも分かっていません。

和訳すると「緑の袖」になるとかそういうことではなく

 

中世ヨーロッパ(ルネサンス期)では「」は不倫を意味しており、

離婚と結婚を繰り返したヘンリー8世を揶揄した曲なのではないかという解釈のほか、

野外で仕事をする娼婦だったのではないかという解釈、

作曲地域とされる一帯が「緑」を妖精の色としていることから、

故人の女性を指しているのではないかという解釈もあります。

 

ヘンリー8世自身が作った曲との噂も流れているようですが、

この曲はヘンリー8世の生きた時代の旋律の特徴を掴んでいないとして

否定されています

(もっとも、ヘンリー8世が作曲家としても活躍していたのは確かなのだが)。

 

「グリーンスリーヴス」は16世紀半ばまで口頭伝承で受け継がれた後、

17世紀にはイングランド中に広まるところとなりました。

 

また、現在はメロディーが若干違う2つのバージョンが使われています。

「レ、ファーソ、ラーシラ…」から始まるドリア旋法と、

「レ、ファーソ、ラーシ♭ラ…」から始まるエオリア旋法です。

北陸本線の接近メロディーではエオリア旋法が使われますが、

電話機の保留音などではドリア旋法も見られます

(どちらも間違いではありません)。

 

問題なのは歌詞で、Wikipediaには以下のように書いてあります。

 

Alas, my love, you do me wrong,
To cast me off discourteously.
For I have loved you so long,
Delighting in your company.
Greensleeves was all my joy
Greensleeves was my delight,
Greensleeves was my heart of gold,
And who but my lady greensleeves.

 

和訳するとこうなります。

 

ああ、私の愛した人は何て残酷な人、
私の愛を非情にも投げ捨ててしまった。
私は長い間あなたを愛していた、
側にいるだけで幸せだった。
グリーンスリーヴスは私の喜びだった、
グリーンスリーヴスは私の楽しみだった、
グリーンスリーヴスは私の魂だった、
あなた以外に誰がいるだろうか。

 

重すぎる!

 

こんな曲がしれっと北陸本線で流されているのです。

なぜICを製造したシャープはこれを入れようと思ったのか

 

新音源ではいくぶんかマシになりましたが、

旧音源ではとんでもなく不気味で、

子どもが聴いて泣かなかったのか気になるレベルです。

 

使用駅は少なく、新音源に至っては2駅しかありません。

また、旧音源は2019年に梶屋敷駅を最後に完全に消滅しています

(警報機が故障してからの交換だったため、実際に聴けたのは2018年内まで)。

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源※完全に消滅

(梶屋敷)、(魚津)、(明峰)、(湯尾)、(南今庄)

※全駅が転換部含めた北陸本線

 

新音源

青海、湯尾

※2駅とも転換部含めた北陸本線

 

5.エリーゼのために

日本でも有名な曲ですね。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したもので、

『バガテル第25番』とも呼ばれます。

 

「エリーゼ」がいったい誰なのかということは分かっておらず、

「テレーゼ・マルファッティ」「エリーザベト・レッケル」

「エリーゼ・バーレンスフェルト」「エリーゼ・シャハナー」など、

様々な説が挙がっています。

特に「テレーゼ説」は、本来"Therese(テレーゼ)"と書かれていたものが、

字が汚すぎて読めず"Elise(エリーゼ)"と間違って受け取った、というものです。

もしそうなのだとしたら浮かばれないだろう…

 

原曲はさらに長いですが、接近メロディーでは最初の14小節程度をリピートします。

 

…が、新音源はいいものの、

LR34611の旧音源は音階と音源のせいで非常に不気味になってしまっており、

夜の無人駅でこれを聴こうものならチビりかねないという

とんでもない恐怖旋律と化してしまっています

大丈夫かシャープ…

 

新音源の使用駅は多く、特に福井県内はほとんどの駅がこれと鍛冶屋という、

ある種お決まりのメロディーになりかけています。アニーローリーの地位が危ない

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源

(青海)、(西高岡)、(小松)、(動橋)、(牛ノ谷)、(細呂木)、(森田)、(北鯖江)、

(王子保)、(南条)、(新疋田)、砺波、穴水

※青海~新疋田まで転換部含めた北陸本線、砺波は城端線、穴水はのと鉄道七尾線

 

新音源

えちご押上ひすい海岸、青海、親不知、市振、津幡、加賀笠間、美川、能美根上、

明峰、粟津、動橋、大聖寺、牛ノ谷、細呂木、丸岡、春江、森田、越前花堂、

大土呂、北鯖江、王子保、南条、今庄、南今庄、新疋田

※全駅転換部含めた北陸本線

 

6.ローレライ

明るい雰囲気の曲です。

採用例は北陸本線内では少なく、小浜線で主に使われているメロディーです。

 

「ローレライ」というのはライン川にある岩、

ないしはそこにいるとされる精霊を指しています。

この「ローレライ」という曲も精霊伝説をもとに作曲されています。

本来はもう少し長い曲ですが、接近メロディーでは冒頭9小節をループします。

 

岩と言いましたが、高さは132mで、

この岩の周囲はライン川の中でも屈指の難所とされました。

川幅が狭く流れが急で、挙句川底に見えない岩が点在するという鬼畜ぶり。

いくつもの舟がここで事故を起こしたようです。

 

やがて、この流域を通ると事故を起こすという事実が伝説に昇華し、

この付近には精霊がおり、美しい姿と声で船頭を魅了し、

舟を川底に吞み込んでしまう」と言われるようになりました

(この精霊は不実の恋人に絶望し川に身を投げた少女とされることもあります)。

 

「ローレライ」には歌詞がありますが、

この伝説がベースですので当然とんでもない歌詞になります。

 

1.

Ich weiß nicht, was soll es bedeuten,
Dass ich so traurig bin;
Ein Märchen aus alten Zeiten,
Das kommt mir nicht aus dem Sinn.
Die Luft ist kühl und es dunkelt,
Und ruhig fließt der Rhein;
Der Gipfel des Berges funkelt
Im Abendsonnenschein.

2.
Die schönste Jungfrau sitzet
Dort oben wunderbar,
Ihr goldnes Geschmeide blitzet,
Sie kämmt ihr goldenes Haar.
Sie kämmt es mit goldenem Kamme,
Und singt ein Lied dabei;
Das hat eine wundersame,
Gewaltige Melodei.

3.
Den Schiffer im kleinen Schiffe
Ergreift es mit wildem Weh;
Er schaut nicht die Felsenriffe,
Er schaut nur hinauf in die Höh’.
Ich glaube, die Wellen verschlingen
Am Ende Schiffer und Kahn;
Und das hat mit ihrem Singen
Die Lorelei getan.

 

近藤朔風氏によって以下の和訳がされています。

 

1.

なじかは知らねど 心わびて

昔の伝説はそぞろ身にしむ

さびしく暮れゆくラインの流れ

入り日に山々あかく映ゆる

 

2.

美わし乙女の巖に立ちて

黄金のくしとり 髪のみだれを

ときつつ口ずさむ 歌の声の

くすしき魔力に魂もまよう

 

3.

こぎゆく船びと 歌にあこがれ

岩根も見やらず仰げば やがて

波間に沈むる ひとも舟も

くすしき魔歌歌う ローレライ

 

完全に水難事故のことを言っています

3番では「歌に魅了された船人が沈む」とそのまま言ってしまっています

これが接近メロディーとして使われているのです

事故らないだけまだマシなのだろうか…

 

採用例は多くなく、ほとんどが小浜線内での使用です。

旧音源は2018年頃にすべて消滅したようで、

現在は北陸地区で聴くことができません。

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源※完全に消滅

(明峰)、(十村)、(上中)、(小浜)、(若狭本郷)

※明峰のみ北陸本線、十村~若狭本郷は小浜線

 

新音源

梶屋敷、美浜、小浜

※梶屋敷のみ日本海ひすいライン(旧北陸本線)、美浜、小浜は小浜線

 

7.さくらさくら

これも日本では有名な曲です。というか日本の曲です。

 

江戸時代に箏の練習曲として作曲されたもので、

現代でも音楽の教科書に掲載されていることがあります。

 

歌詞も分かりますか?

 

さくら さくら

野山も里も 見わたす限り かすみか雲か

朝日ににおう

さくら さくら

花ざかり

 

シンプルですね。

 

ところで、この曲にはもう一つ歌詞があるようです。

というかさっきの歌詞ではなくこっちで覚えている人もいるでしょう。

 

さくら さくら

やよいの空は 見わたす限り かすみか雲か

匂いぞ出ずる

いざや いざや

見に行かん

 

こちらが元の歌詞で、前記した歌詞は1941年に定められたものです。

両方書いて「野山も里も」を1番、「やよいの空は」を2番とすることもあります。

 

日本の代表的な歌であるがゆえに、国際的な場でも演奏されることがあります。

 

接近メロディーとしての採用例は少ないですが、

なぜか旧音源と新音源が両方揃っています本当に何故…

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源

(新疋田)、砺波

※新疋田駅は北陸本線、砺波駅は城端線

 

新音源

谷浜

※谷浜駅は日本海ひすいライン(旧北陸本線)

 

8.禁じられた遊び

LR34611に収録されている音源のうち、

接近メロディーとしては最も使用例が少ない曲です。

 

原曲は正確には「愛のロマンス」といいます。

19世紀後半にギターの練習曲として作曲されたとされており、

1952年に映画『禁じられた遊び』の主題曲となった際に知名度が上がりました。

 

日本では「愛のロマンス」ではなく、

映画名「禁じられた遊び」の名でレコードが発売されたため、

そちらで名が広まってしまうことになりました。

筆者自身も「禁じられた遊び」で馴染んだため、

この記事ではこちらの名を使用します。

なんで馴染みあるのかって?

私が初めてまともにピアノで弾いた曲がこれだったんです

 

LR34611音源のものはICに収録された際にかなりのアレンジが入ったため、

場合によっては言われないと気がつきません

というよりさんざんピアノで弾いたはずの筆者が

「禁じられた遊び」だと言われているのに気がつきませんでした…

 

曲調自体は明るいと言えるものではなく、

LR34611では音源も相まって人によっては不気味に聞こえてしまいます。

 

北陸本線内での使用は2例のみありますが、

いずれもYouTubeが本格的に広まる前に使用をやめてしまったため、

動画や音声として残っている記録はほとんどありません

 

各鉄道事業者もこの曲ばかりは使う気になれなかったのか、

以後復活は確認されておらず、新音源化もされていません。

新音源化したらいくぶんか聴けるメロディーにはなりそうなものだが…

 

LR34611に収録されている他の7曲は新音源化されまだ駅で聴くことが可能ですが、

この曲だけはどう頑張っても駅で聴くことは叶いません。

その点で「幻の接近メロディー」といえるでしょう。

 

…が、後述する場所でそのものの音源が現在でも聴けることが分かっています。

 

使用駅は以下の通りです。

旧音源※完全に消滅

(青海)、(南今庄)

※2駅とも転換部含めた北陸本線

 

新音源

※使用駅は無い

 

9.廃止された旧音源を生で聴く方法

これまでつらつらと書き連ねてきて分かったように、

近年ではメロディーの更新で旧音源が聴けなくなってきています。

 

「アニーローリー」「さくらさくら」は残り1駅、

「村の鍛冶屋」「かっこう」「エリーゼのために」は残り2駅となっており、

「グリーンスリーヴス」「ローレライ」「禁じられた遊び」にいたっては

すでに駅から姿を消しているという状況です

(笠島駅の警報機が故障しているため、「村の鍛冶屋」「かっこう」は

実質あと1駅になっています)。

 

「それでもどうしても直接聴きたいんだ!」という物好きの方もいるでしょう。

しかし使われていない以上泣き寝入りをするしかない…かと思いきや、

YouTubeやニコニコ動画などのインターネットサービス上ではなく、

本当に直接聴ける場所がまだ存在しているのです

 

神奈川県相模原市緑区にある相模湖公園がそれで、

園内の遊具にLR34611が取り付けられているのです

 

古いテーマパークなどによくある、お金を入れると音楽が鳴って動く遊具の1つで、

LR34611に収録されている、

そしてこの記事で紹介した8曲すべてを聴くことができます

まさにファンにとっては夢のような場所です。

 

欠点があるとすれば1曲鳴らすごとに100円(=8曲で800円)をぶんどられること

遊具がゆらゆら揺れるので酔いやすい人は厳しいこと

そして何より大の大人が子ども用の遊具に約10分乗り続け、

最悪の場合周囲の老若男女から注がれる、相模湖の水よりも余計冷たい目線を

10分間浴び続けなければならないという、

精神的な重圧に耐えなければならないことが挙げられます。

 

よほどのことがない限りは駅で収録した方が優しいです。いろいろな意味で。

 

ただし「グリーンスリーヴス」「ローレライ」「禁じられた遊び」は

既に駅から消滅して久しいため、

自らの手で直接聴くとなれば必ずここを訪れなければならないでしょう。

 

件の遊具は見た限りではかなり年季が入っていると思われる

(というよりLR34611を搭載している時点で相当古い)ので、

突然撤去されている可能性も無きにしも非ずといったところです。

訪問欲がある方、ぜひともお早めに……

それは筆者にも言えたことなのであるが

 

 

 

 

というわけで、北陸本線の接近メロディーについて解説してみました。

使用駅の件はもう適当ですので、絶対ミスがあります。

ご指摘お待ちしております。みんなで完成させましょう。圧倒的他力本願

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。