「9月なのに、学校がない」

 

これって、初めての体験?

かもしれない。

これからは、ずっとこんな感じなのか・・・

 

お昼まで、たっぷり時間がある。

いつもこの時間に起きてる。

夜更かしすることってないし

ずっと寝てると、なんかソンした気分になる。

 

今日も、いい天気。

さあ、どこに行こうかな・・・

 

海の近い、海が見える場所。

とにかく、水があるところ。

 

そうと決まれば、さっそく準備。

と、言っても、スマホさえあれば、いいんだけど。

今日は、このバッグで行こう。

靴は、・・・ 歩くことを考えて、これにしよう。

 

ファッションは、直感。

でも、後悔したことなんてないなあ。

センスに自信があるかと言うと、

よくわからない。

でも、「変だよ」って言われたことないから

それなりなんだろう。

 

電車を乗り継いで、約1時間。

この駅もだいぶ見慣れてきた。

みなとまち、横浜。

この風景は何度見てもいいなあ。

とりあえずシャッターを切る。

 

雨の時もあったけど

青空なら、その青がどこまでもつづく。

そこにいるだけで、なんか落ち着く。

 

石畳の坂道を上がる。

あの丘の上から、海を眺めるのが好きだ。

風の匂いが、変わった。

自分の靴音だけが、聞こえる。

 

ここは、自分だけの隠れ場所。

やっぱり今日も誰もいなかった。

「独り占め」 

ぜいたくな言葉だけど、

でも嫌いじゃない。

 

ワンピースの裾が、風になびく。

こんなところに、桔梗が咲いてる。

よかった、気づいてあげられて。

 

坂を下りたところに、

雑貨屋さんがあった。

かわいいものは見てるだけで楽しい。

時間を忘れてしまう。

忘れる・・・ 忘れてる、と言えば・・・

 

お昼ごはんーー!!!

まだ、食べてない・・・

なんも腹に入れてないぞー!

 

迷わず、アレだー!!

あの辛さが、クセになってる。

そう、ここでしか食べられない味。

今なら、まだ列はできてないかも。

 

急ごう!!

 

あの辛さの後だと、

デザートが格別!

ミントの香りが口いっぱいに広がる。

 

「カフェなんか、行かないよ!」

もう何年前だっけ?

そう言ってた自分が

今ではおしゃれなカフェを

気付けば探している。

 

コーヒーは、まだ、飲めないけど。

 

さて、もう一回りして、帰りますか。

 

あれ、ここって、メンバーと来た覚えが・・・

 

ひとりの時は、ひとりでいたい。

束の間でもいい。

私は私自身と、つきあいたい。

 

私は、私が誰だか、知りたい。

 

アイドルじゃない、私。

エビ中じゃない、私。

 

でも、もう想像すらできない。

 

また、どこか外国に、行きたいな。

全然知らない場所に。

 

案外、どこに行っても、生きていける気がする。

 

あの船に

あの大きな白い船に

乗ってみたいから

私、横浜に来たのかな・・・

 

ねえ、答えてよ、カモメさん。

そんな大きな声で、鳴いていないでさ。

 

潮風が、なごり惜しく、まとわりついてくる。

大丈夫、また、すぐに会えるから。

 

駅へと向かう人混みの中に

莉子ちゃんの足音は消えていくのでした。

 

追いかけて、ヨコハマ。