パチスロその⑬-《アイツ》10- | ギャンブル依存症を自覚したボクが書く日記

パチスロその⑬-《アイツ》10-

お盆に合わせて、
何とかして実家に帰ろうと思った。
《アイツ》の家から出たボクにとって、
その頃の生活費というのは
スロットを打つ金、というのと同義だった。
つまり…
生活=スロットを打つ、ということだったのだろう。


相変わらず、自分の家のライフラインは
復旧していないままだった。
正直、どんな生活をしていたのか、
あまり覚えていない。


スロット屋に入る寸前にかかってきた電話。
高校時代の友人から。
「お盆の時期に同窓会やるんだけど…」
というお誘い。
ボクは咄嗟に金の計算をした。


お盆前にはギャラが入ってくる。
交通費にどの程度かかるから、
それ以外にある程度の金を残せばいい。
普通の人の考え方ならそうだろう。
『実家に帰る日までに、●●円勝てばいい』
普通にそう考える。
要するに、そういう思考回路しかない。
ギャラの入金日から実家に帰る日までの間は3日間ほど。
それまでに、同窓会での飲み会費用を叩き出せばいいだけだ。
『簡単なことだろう』
そう考える。そんなものだ。


そして、負ける。
ぎりぎり実家へ帰る金を残して。
そうなった時に考えること。
真っ当に生きなかったことへの後悔も少しはあるのだが、
それ以上に
『また、しばらく打ちにいけない…』
という寂しさのほうが強かった。


そして、ボクは残った金を軍資金として使うことなく、
ぎりぎりの飛行機代で帰省した。
しかし、同窓会費用はその時、
手元に残っているはずがなかった――。


実家に帰ったボクは、
家からほとんど出ずに過ごした。
父親の霊前に正座をし、線香を上げた。
何を語りかけたのだろう。
位牌に真っ直ぐ目を向けることができず、
すぐに目を閉じたような記憶がある。


同窓会に誘ってくれた友人に電話をかけた。
『金がない』――。
友人は、『大丈夫だよ』と言ってくれた。
その言葉に、多少の罪悪感を抱えながら、
ボクは、金がないにも関わらず、
同窓会に出席することを決めたのだった。

(つづく)

つづきを読みたい方はポチッと

人気blogランキングへ

借金ブログランキング