パチスロその⑨-《アイツ》6- | ギャンブル依存症を自覚したボクが書く日記

パチスロその⑨-《アイツ》6-

そんなある日のこと。
ボクと《アイツ》は、小旅行に行くことになった。
仕事のギャラが振り込まれた直後のことだ。
小旅行といっても純粋な旅行ではない。
《アイツ》の仕事が数日間、
関東近隣への出張となり、
それならば、ということで
宿泊しようという話になった。


朝一で出かける《アイツ》を見送り、
ボクはベッドから起き出し、財布を確認した。

《アイツ》の仕事が終るのは夕方以降だった。
初日は、夕飯を一緒に食べようと約束していた。
予定に合わせ、数日間のスケジュールは空けている。
当然のように、ボクはパチスロ店に出向いた――。


10万以上の金が財布には入っていた。
『時間もあるし、まぁ、遊べるだろう』
『その上で、少しでも増えたら儲けものだ』
打ち始める前は、そんなことを考えていた。
持っている金額の大きさが、ココロに余裕をもたらせていた。


設定はおそらく④もしくは⑤
そういう確信はあった。
しかし、展開に恵まれず、追加投資を余儀なくされていく。
1枚、また1枚と財布から1万円札が失くなっていく。
ゆっくりと、けれど確実に、
脳内の回路が焼き切れていく――。


BBはひける。
しかし、継続をひけない。
それでは勝てない。
『北斗の拳』というのは、そういう台だ。


やがて、千円札をサンドに入れる行為が惰性になっていく。
そして、次に壊れていくのが記憶の回路だ。
財布の中に入っていた金額は覚えている。
しかし、どれくらい使ったのかを思い出すことができなくなる。
残金を確かめるのが怖くなる。
現実を直視することができなくなり、
いつしか、レバーを叩く行為すら苦痛に感じ始める。
それでも、打ち続けるしか方法はなくなる。
投資金額のデッドゾーン――
それを超えた瞬間、それ以外の方法はアタマから消え去った。
イヤな汗を、首筋に感じていた…。


夕方の4時過ぎ。
財布の中からは7万円以上の金が、消えていた。

その金は、数日間を《アイツ》と過ごすための金である。
宿泊料金などは支払っていたため、
泊まる場所に困ることはない。
そうはいっても――


ギャラが入ったばかりであることは《アイツ》も知っている。
そして、ボクのことを疑わしいという目で見つめている。
「金がない」という言葉は、タブーに近かった。
『取り戻さなければならない』
その一念で、ボクはその台を打ち続けた。


奇跡は、たまに舞い降りる。
夕方の5時を過ぎた頃にひいたBBから、
ようやく何かが変わった。
タイムリミットまであと2時間強。
その2時間で、ようやく4千枚ほどのコインを獲得できた。
金額にして8万円弱。
ぎりぎりのところでの、逆転勝利だった。
ボクは、大きく息を吐き、安堵感に酔いしれた。
充足感や勝利の余韻などはない。
ただただ、安心とほっとした気持ちが全身を包んだ。


その後――
ボクは無事に《アイツ》と落ち合い、
2~3日の小旅行を終えた。


日が経つにつれて、逆転勝利の快感が拡がる。
それと共に、
僅か半日で7万円が失くなるかもしれない台
という認識は薄れていってしまう。


ギャンブルという偶然を
必然へと書き換え
自らの実力、力と勘違いする
傲慢で愚にもつかない思考に
その時は、まだ気づいていない…。


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