パチスロその⑤-《アイツ》2》-
逃ゲ出シタイヨ。
モウ、イイヨ。
フザケンジャナイ!
ドウシヨウ・・
その頃、ボクのアタマの中は、
そんなネガティブな思いで占められていた。
延々と繰り返されるフレーズ。
その都度、答えの出ない自問自答。
イラつく日々。
まるで、定まっていない・・
繰り返しになるが、
収入は、あった。
常に3~5件のクライアントを抱え、
3日おきとか、5日おきとか、
それくらいの期間でギャラが入ってくる。
片っ端から使う、もしくは返す。
終りの見えない無限の連鎖に、
未来を考えることが失くなった。
何を見ていたのだろう。
先も見えない。
足元も見えていない。
ボクの眼には、その当時、
何が映っていたのだろう――
おそらくは、
何かを見たくて、そして掴みたくて、
《アイツ》と一緒にいたのだと思う。
それは、何度も言っている《実感》というもの。
しかし、それはいつもいつも、スルリと逃げていく。
何かから逃げようと必死に走っているボクが、
掴めるものではない。
きっと、ボクは、
必死で《アイツ》の顔を記憶しようとしていたのだろう。
憶えていられない自分を認識しながら、
忘れてしまうと、自分が消滅しそうな
そんな危うさを感じながら。
《アイツ》の家に初めて行った。
そして、そのままボクは、
自分の部屋に帰ることはなかった。
ひどく、歪んだ形での、
同棲生活が、始まっていた――
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