ギャンブル番外編-スリップその④- | ギャンブル依存症を自覚したボクが書く日記

ギャンブル番外編-スリップその④-

さわさわとするココロを持て余していた。
会社に行き、作品を作り、
自宅のPCにメールで送り、
家と会社の両方で作業をできるようにする。
指が止まる。
言葉が出てこない。
惰性のように、物語は同じ場所を回り続ける。
同じ表現、似たような展開、
くどい言い回し、陳腐な会話――
魂がこもっているのか、いないのか、
解らない言葉の群れが、
ワープロソフトを埋め尽くしていく。
原因は、解っていた。


戻ればいい、そう考えていた。
けれど、少なくともその期間、
ボクは、冷静に作品に向き合うことができなかった。
それでも・・
2日続けては打たない!
という決め事だけは死守していた。
無為に、時間が過ぎるのもイヤだった。
《了》の文字を、早く打ち込みたいと焦ってくる。
作品の全体像を捉えることが困難になった。


ギャンブルの怖さは、
視野を狭めることにある。
自分の立ち位置を錯覚させ、
唯我独尊な気持ちにさせる。
ちっぽけで、無力な自分を忘れさせ、
巨大で万能な自分を演出する。
視野の狭まりは、長編の小説を書くのに、致命的となる。


ラストシーンを書くことができないまま、
年を越えようとしていた。
そしてボクは、
忘年会が終った後、酒の入ったまま、
雀荘へ足を運んだ。
酒を呑んだら打たない――
その禁を破って。


もう、無理矢理にでも、金を失くすしかない。
そう考えていた。
徐々に、徐々に、冷静なココロはさわつき始め、
疲れを抱いたカラダをいたわることもなく、
出口を探すようになった。


それでも――
ボクは、作品を手放すことだけは考えなかった。


つづく


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