麻雀その②-離婚- | ギャンブル依存症を自覚したボクが書く日記

麻雀その②-離婚-

離婚する。
そうは言っても、
手続きやら何やらいろいろとやることはある。
今日決めて、明日「じゃ、さよなら」
とはいかない。

一般的に
離婚は結婚よりも体力を使う
と言われている。
それは間違いではない。


最後の1週間。
荷物をまとめるのが億劫だった。
喧嘩もたっぷりとした。
もう話し合いではない。
感情の垂れ流しだ。
カノジョは指輪を手に取り、
投げつけ、泣いた。
「質屋にでも、どこにでも持っていけ!」
と……。


そして迎えた、離婚前夜――
互いにすっかり疲れ果てていた。
金のこと、互いの生活のこと、
そして壊れてゆく互いを見ながら、
それでもさまざまな手続きをしなければならない。
翌日は、区役所に行く約束だ。
離婚届が手許にあったかどうか…
それすら覚えていない。
ひょっとすると、区役所に行って記入したかもしれない。


互いに大きくため息をついた。
「ドウシテ、コウナッタンダロウ…?」
ボクのココロに、そんな思いが浮かんだ。
一緒にいた。
不思議と、自然なことのように思った。
隣同士に座っていることが……。
居なくなるんだなぁ……
独り、になるんだなぁ……
と、感傷に浸ってみても、行き着く先は
「ま、いっかぁ」
「仕方ないな」
以外にはなかった。


感情を失くそうとしていた。
この頃、借金とギャンブルの狭間で、
それでも仕事をし、
カノジョに必死で隠そうとしていたボクは、
表面を取り繕うためだけに、
自分の感情をムリヤリ奥に押し込めていた。
そんな生活が長く続き、
いつしか、感情を取り出すことが困難になっていた。
哀しい、辛い、寂しい……
そんな感情はなく、
どこか自分を俯瞰している
諦観でココロは満たされていた。


「何とか、変えたかったんだけど……
 結局、ムリだったね。私じゃ、
 力不足だった……」
カノジョが静かに言った。
ボクは俯いて黙っていた。
何も言えなかったのは、
カノジョに対しての罪悪感ではない。
『当たり前だろ。ヒトがヒトを変えるなんて、
おこがましい……』
そんなことを思っていたのだ。


沈黙が続くうち、夜も更けていった。
「最後くらい、一緒に寝ようか?」
ボクは言った。
カノジョは何も言わず、ボクの隣で横になった。


ボクとカノジョが形作ってきた
『世界』が終りを告げようとしていた。


世界の終焉の前日、
きっと、
ヒトは愛するヒトとカラダを合わせることを望むだろう。
この世が滅びると決まった瞬間、誰もが
そう、願うはずだ。


カノジョの体温を感じ、血液の流れを感じ、
失くなる、実感が、増した。
自分でも気づかないほど、
ココロのずっと、ずっと奥のほうで、
「ごめん……」
と言っている自分がいた。


そして、朝を迎え、昼を少し過ぎる頃には、
ボクたちの『世界』は完全に失くなっていた――


ボクは引越し、新たな生活を始めた。
「今度こそはしっかりしよう……」
そう思いながら、自宅から一番近い雀荘を探していた。


そして、この時、
ボクはまだ気づいていなかった。
カノジョのココロが、
どれだけ蝕まれていたのかを……。



※ここまで、時系列的に書いてきたのですが、
 次回、その禁を破り、カノジョとの話に繋げます。


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