競馬その②
※よくよく当時を思い出してみたら……
『学生ローン』で借りたお金の他に、
何か返済があったような気がする。
そうだ! 悪徳商法に騙されたローンを抱えていたんだ!
と、今さらながらに思い出した。
確か、金額が50万円ほどだったように思う。
その頃、
とにかく競馬人口は多かった。
ボクの周りに限っての話かもしれないが……
話すことは競馬の話。
週末は、朝から競馬場に通う。
金曜日の夜から、知人に電話し、
あ~でもない、こ~でもないと、
延々と競馬の予想を語り合う日々だ。
正直、楽しかったのだと思う。
友達の輪が徐々に拡がっていく感覚が。
しかし……
今思えば、それは落とし穴だ。
友人ができるということは、
そこに義理やつきあいが生まれてくる。
週末は『競馬に行く』ことが当然になってくる。
電話が鳴り、翌日の予定を決める。
金がなくても断れない状況になる。
ボクの場合は、そんな感じだった。
それで、競馬の資金を作るために、
消費者金融の個室へと足を運ぶことになった。
最初は緊張した。
『ギャンブルの資金が必要で……』
そんなこと言えるわけがない。
『生活費が足りなくて……』
金を得るための最初の言い訳だった。
用紙に記入するとき、多少手が震えた。
担当者のマイクの声にビクッとなった。
確か……
50万円は貸してもらえなかったように記憶している。
20万円か30万円くらい。
とはいえ、後日、その金額は簡単に50万円まで上がるわけだが……。
こうして消費者金融の個室体験は終了した。
20万円(もしくは30万円)が入ったカードが財布の中にあった。
慣れるためには1度の体験で充分だった。
次の店では、すでに手も震えなかったし、
すごく事務的に手続きを終えたように思う。
1枚、また1枚とカードが増えていく。
そして、何とか返済を続ける。
そうすると、限度額が増えていく。
それを借りては、返済にまわす。
競馬で一発当てて、完済しようと気が逸る。
ボクは自転車をこぎ始めた。
この頃は、借金について何にも解らないまま自転車をこぎ続けた。
小金を手に入れるためには実にさまざまな方法がある。
クレジットカードでカメラを買い、質屋に流す。
MDプレイヤーをリサイクルショップに売る。
右から左に金が動いていく。
1人になると、ため息をつくことが多くなった。
少しでもそんな寂しさを紛らわそうと、
ダイヤルQ2(時代が知れる)の出会い系にハマったりしたのもその頃だったなぁ。
電話代が10万を超え、泣きたくなった記憶がある。
払いに行くとき、コンビニのおニーちゃんから嘲笑されているように感じたなぁ……。
バイトも始めた。
以前、バイトをしていた雀荘の知り合いが
新しい店を出したので、そこで働くことにした。
雀荘のバイトは、日払いも可能だ。
週末、朝まで働いて、僅かばかりの日当を握り、
寝ることなく、競馬場へ足を運ぶ。
金銭感覚が崩壊していた。
現在の行動が未来のどこに繋がっていくのか、
そんな想像が完全に欠如した。
できることは……
目の前の支払日を何とかやり過ごすだけだ。
その頃の行動を考えると……
給料をもらう→週末を待ち競馬に行く(もしくは麻雀で競馬の軍資金を稼ぐ)→返済金がなくなる→小金をつくるために奔走
そんな感じだった。
実は……
それでも『何とかなる』と思っていた。
そして、実際に何とかなってしまうものだから恐ろしい……。