「軸方向単一指向性」マイクの自作、最難問は筐体です。
それもそのはず、メーカーにとってもその苦労は同様ということは前回お話した通りです。
誰でもが手を出すのは既存マイクのケースを使った「ヤドカリ」手法です。これは便利のようですが、「軸方向単一指向性」マイクではかなり厄介なことになります。
「サイドアドレス型」とは異なり、有り合わせのケースで最適な音を得ることは「軸方向単一指向性」型では不可能に近いほど至難の業なのです。
(マイクロホンの形状による分類は基本中の基本です)
さて前回の「ATM-25」のヤドカリマイク、その後どうなったでしょう。
フラット系の音色を目指したため困難なチューニングをくりかえしたが、問題点の見直しをおこなう良い機会であった。
戦いは終わった(激戦地上空から)
完成させました、前記事も参照の上御覧ください
KOWAのKT-2578 EC MK5を使用しました。
回路の変更はありません。
興和テクノロジーのHPより(現在さらに改良されているはずです)
【問題点】
1.あの金色カプセルですが、かなり特殊であることが関連商品の説明
文から判明しました。
1個450円としてはきわめて良くできていますが、最初にカプセルの試
聴した際感じた点はそのままこのカプセルのキャラクタだったわけで
す用途が違うだけだ。
2.ボディ内側のヘルムホルツ共鳴防止の手法が過剰だった反作用。
3.基板上のFET、ゲート入力インピーダンスは数100MΩ以上であるが、
湿度70%の環境にもかかわらず吸音材に「脱脂綿」を使ったことによ
り湿気を吸い、FET ゲートの不適正抵抗によるターミネート同様となっ
た。そのために低域不足及びレベル低下が起こった。
この件は3月の記事 「1908 :棒状コンデンサマイク、ココで高音質化 AMAZON
NEEWER 410」 の例でも経験しています。
https://blog.ameba.jp/ucs/entry/srventryupdateinput.do?id=12444332888
4.上記3同様のプロセスでカプセル裏側の吸音も背電極(バックプレー
ト)~GND間の絶縁不良となり、さらに見かけ上のゲート抵抗をさらに
低下させることとなっていた。
5.カプセル配線が太く、カプセル容量(実測60PF)に対して実装すると無
視できない値となり「無効容量」として感度低下を招いていた。
6.マイクフロントの音響回路が不適正。
【このように問題解決した】
1.カプセルを興和テクノロジーのKT-2578 EC MK5をに使用した。
このシリーズのカプセルは自身でも実績豊富、失敗したことがない。
特性は上図にあるように、単一指向性らしからぬフラットさと大口径特
有の優しい音が特徴です。
2.ヘルムホルツ共鳴は内蔵物がある状態で680HZでしたが、高抵抗部
への影響を考え、「化学綿」を薄くふんわり入れる程度で十分だと判
明。
3.FETまわりには化学綿すら当たらないようにしてゲートの高インピーダ
ンス保持に注力した。
4.カプセル裏側には吸音を行わない方法で音作りした。
5.GND配線はそのままだがAWG-26の撚り線をAWG-32という細線に交
換した。 これにより2ターンからげた場合12PFが7PF(実測)に下が
り、音響阻害要素(無効容量)を12PF(20%)→6PF(10%)に半減させた。
6.カプセルの物理的位置関係の変更、小バッフルの追加マウント。
【最終結果】
1インチ径マイクとしての標準的な音が得られた。
小バッフルをつけたカプセルはオリジナルのATM-25のマイクユニット部に置くことで最も良い結果を得た。
調整に使用したツールは「マイボイス・リアルタイムモニター」、つまり
900STモニターヘッドホンと自分の声のみです。
(さいごに)
十分当初目標は達成できた。
一瞬聴いた時のどことなく感ずる「バタ臭さ」はやはり形状から来るのだろう。
このようにカプセル載せ替えもあり・・・かと
以上ATM-25ヤドカリマイクの顛末でした。
おなじようなことできっと壁にぶち当たるであろう諸兄の一助となれば幸いです。
以上
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