1921 :マイクロホン回路はシンプルが決め手、オーディオプリの延長にあらず | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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マイク自作(マイクロホンクラフト)をされている諸兄へ

 

あるきっかけからこの記事を書くことにしました。

 

  

新しい設計のノイマン、AKGの業務用マイク。(記事の内容とは無関係です)

 

 

今東西「世界の名機」といわれるコンデンサマイクロホンの、その回路に目を向けてみました。

 いずれもシンプルかつディスクリート回路であるのはなぜでしょう。

トランス搭載も健在、どころかそのほうが優れた結果を出すので好まれる、それは何を意味しているのでしょうか。

 

晴れ  「そんな古臭いのとサヨナラして最高のマイクを作る」と豪語して、鼻息荒くマイク作りをしようとする回路屋さんがつまづくポイントがある。

 

                         ホール録音の例

 

 

 

回路屋さんがつまづくポイント

 

1.「コンデンサマイクロホン」に必要な要件は200~300mあるいはそれ以上の伝送路であるケーブルと信号の受け側であるHAまで信号劣化なく届けることをを考えねばなりません。

そして「マイク」自身もHA部から供給されるきわめてひ弱なファンタム電源(回路電流1~3mAが理想)で動作する、というのが最低条件です。

 

2.ホール内配線は「大きな容量負荷」の200m~300m、いやそれを超えるケーブル長も普通です。 

 

3.出力インピーダンスに興味を示さない。 

 

4.「ここ一番の命」、トランスを「悪」と刷り込まれている。

 

5.「インピーダンス・バランス型」に知識を持たない。

 

6.「高性能プリアンプを作れば良い」と考え、伝送ラインとHAを含めた巨大な回路を読むことが出来ない。

 

7.「理想的な回路なら素晴らしい結果になる」、と希望的オーディオアンプの常識で考える。

しかしながらマイクロホン内蔵AMPは「オーディオプリアンプの延長」などではありません、世界の有力コンデンサマイクを手にすることなしに、それは絶対にわからないでしょう、授業料を払って勉強してください。 

 

ほかに

「伝送」についてはあまり考えていなかったとか・・・

「あんまり伸ばすと発振するぞ」の声が聞こえた。

「プリでラインレベルになっているから大丈夫」という声も聞こえてきた。

 OPアンプ回路化するうち、ファンタム電源ではどうにもならず、その仕組みも学ばないうちに「使い物にならない」、とこれを嫌い、「回路とパーツを厳選した理想的内容」で外部電源動作させる、と回路シミュレータを駆使して迷惑なガラパゴス・マイクを作って沈没する。

 

 

沈没する前に「名機」と呼ばれる海外のマイクロホンの回路を片っ端から研究してほしい、マイクロホンに求められている要素はオーディオアンプ回路専門家のそれとはまったく異なることを知るべきです。

 ノイマン、AKGと回路公開している範囲でOP-AMP搭載モノが見えるがモノがちがう。「単一電源」「動作電圧範囲の圧倒的な広さ」「小電流」、そして部分的使用であることが特徴。

全体としてはディスクリート回路であるが、同一機種シリーズであればなぜか旧型(トランスを使用したディスクリート型)が好まれます。

 

コンデンサマイクとは

 XLR、 3Pの接続で完結させなければならないのがコンデンサマイク、旧型真空管マイク以外「外部専用電源」などありえない。

 

48V電源はバランスのHot、Coldそれぞれに6.8kΩの抵抗を介して接続されますので、その負荷(マイク出力部)にはその分圧された電圧が供給されます。 これこそが唯一の回路電源になります。

 

負荷(マイクロホン)により48Vはドロップしますがその全電流の平均値は3mA以下です、ノイマンのファンタム規格により電流の最大値は14mAですがこのとき一体何ボルトが回路電圧になるでしょうか、残念ながら「0V」です、つまり負荷ショートしても回路は安全であることすら条件であるわけです。

したがって全電流5mA超えたら「デカイ」と認識すべきです。

(どんなマイクロホンも絶対に48Vで動作していませんので、電圧降下を見込んだ電圧、それ未満での安定動作を最初から設定する、それが業務用マイクロホンとしての要件です。

それができないシビアなものは単なるオモチャに過ぎません。

 

ホール録音ではマイク回路のCMRR(コモンモード・ノイズ排除能力)がモノをいうが、それだけでは外部ノイズ防止のEMCの完結には至らない。

 

 

必須要素です

いきなりファンタム電源の接続・遮断(ON-OFFではない)は起こり得る。そんな電気的ショックで素子の破壊が起こるなどは絶対にあってはならない。

 

入出力XLR各端子の短絡、負荷条件変動にゆうゆうと耐えられる電気的頑丈さ。

 

大幅な電圧変動でも正常に動作する許容力。

 

すなわちマイクロホンというシステムに求められるものと高品位なオーディオ・プリアンプの繊細なノウハウとはかなり異なっており、観点・アプローチのズレたマイクロホンを提供されてもそれを仕事道具にしている者にとっては迷惑以外の何物でもないでしょう。

 

物理特性がどんなに優れている、と自称しようとも「音楽の録れないマイクは不要、AKG CK-1ヘッドをクラシックの音源相手に褒めたたえる感性では絶対にマイクは扱えない。

 

そしてマイククラフトの世界は現代・過去、世界の名機に学ぶ積み重ねヌキに迂回・ショートカットをする限りそれを超えることなど絶対にできない。足元にもたどり着かない難物になるのが私の経験から結論と言えます。

 

さいごに

個人の趣味で何をやろうと自由だがその前にマイクロホンを知るべきです。

世界標準である「P-48」(ファンタム規格)を勝手に改変・破壊する策動は業界が絶対に許さないでしょう。

 

            以上

 

 

(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3、
fetⅡ‐bright など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わとせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作) 

 

モノ作り日本もっと元気出せ 

 

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